調査研究事業

◇龍王山憩いの森一帯での水質・水量調査
 <運営委員:佐々木健(広島国際学院大学 教授)>

  平成13年度
■調査内容:龍王山周辺の沢水、湧き水、半尾川の水質、流量の調査を行った。
■水の分析:水の分析第4版及びJISOK102に準じた。
■現在までに明らかになったこと。
@龍王山周辺は、水質はかなり良質、他の広島花崗岩地域の水質に比べるとややミネラルが多い水が分布
A湧き水に名水がある。「かえる湧き水、龍王名水」とP湧き水(駐車場脇)
B5月渇水時の水量調査を行った。渇水期には水量がかなり低下する。
 今後、山の手入れにより、渇水時の流量復活が調査のポイントとなる。


  平成14年度
■調査内容:龍王山周辺の沢水、湧き水、半尾川の水質、流量の調査を昨年度に引き続き実施。今年度は、毎月(年12回)綿密かつ、正確に実施した。
■採水場所:昨年と同じ場所
        源流、龍王名水(かえる湧き水)、はかはし、堰堤下、駐車場湧き水、池、高速道路下、半尾川:降雨確認から3日以上1週間以内に採取
■水の分析:水の分析第4版及びJISOK102に準じた。
■流  量:断面積一流量法(タクマ流量計を使用)
■今年度、更に明らかになったこと。
 @龍王山の水質は良好で湧き水に名水がある。このことは再確認、間違いない。
 A渇水期に水量は低するが、最大の約1/3程度野湧き水、沢水流量がある。 水質も渇水期にもかかわらず、そう変化はない。山の保全が良好か。
 B湧き水は、涸れない。今年の夏は、かなりの渇水で会ったが、涸れなかった。渇水時の基本となる水量の定量的確認ができた。今後への基礎的なデータと成りうる。
 C現在のところ、比較的水のある山と思われる。 今後、山の手入れにより、渇水時にどのように水量、水質が変動するか追跡が必要。
 Dふもとで水量、水質がどのようになっているか、今後の調査が必要

  平成15年度
■調査結果・明らかになったこと。
 @水質は安定している。
 A地下水流量も安定しており、比較的保水力のある地域である。
 B下流域の流れ下がると、水の硬度が次第に上昇し、酒に適した水になる。 水脈によっては、軟水のままの水もある。
■水質変化のまとめ
 ・上流部にある「かえる湧き水」は、電気伝導度が73、硬度は14と軟水である。中流部の井戸水は
 ・電気伝導度が198、硬度は60中硬度水に変化し、下流部酒造地区の井戸水では、電気伝導度が366、硬度は124の硬水に変化している。
 ・これらを比較すると上流から下流に向かうにつれ、硬度と電気伝導度が上昇し、硬水に変化していくのがわかる。
 ・更に、他の地域と比較すると、他の地域も標高が低くなるにつれ、硬度と電気伝導度が上昇し、軟水から硬水に変化しているが、西条地区と比較すると、値が低いことがわかる。
    
  平成16年度
■調査の内容
 @ 長期間、定点観測水質データを取るために、平成15年度と同じく、ほぼ月一回の採水を行い水質を調査した。
 A 龍王山山頂から流れる地下水の硬度変化の確認調査
 B 龍王山周辺、西条酒造地帯周辺の地質と水質の関係の解明。水質成分の変化に地質が非常に重要ということが明らかになった。
  (従来、一般論としていわれていたが、データで明確にされたのは初めて)。
 C 今回新たに行った試験として、山頂の湧き水と酒造地帯の湧き水の発酵力の差の測定を行った。これにより、西条の水が酒造用水としてどのようなものか定量的、科学的に評価ができると思われる。
■調査結果・研究で明らかになったこと。
 @ 毎月の定点観測データは、基本的には平成13年から平成15年と大差はなく、水質は比較的安定している。
 A 地下水が龍王山近くを流れ下るにつれて、硬度変化する状況を確認した。
 B 龍王山周辺の地質調査を行った。花崗岩、高田流紋岩地質であり、流紋地質がミネラル溶出に重要な意味をもつことが推定された。
他の高田流紋岩地帯では、このような現象が見られないので、龍王山の流紋岩は特殊なのか。
水質との関係を厳密に解明する必要性が新たに認識された。
 C 山の湧き水と酒造地帯の水の発酵潜在力を独自開発の手法で調べたところ、西条酒造地帯の水は、硬度が100〜120mg/Lと中硬度水であるにもかかわらず、硬度約300mg/Lのフランスエビアン水に匹敵する発酵力が認められた。また、酵母の増殖を促進するきわめて優れた水であることが、発酵増殖試験により明らかになった。山の湧き水は軟水で、発酵力、酵母増殖促進効果はともに低く、酒造に適さないことが明らかになった。
■今後の課題
 @ 定点観測の継続、水質、水量の変化の様子の追跡。森林手入れの効果の確認
 A 龍王山の地質と水質の関係の解明。流紋岩からのミネラル溶出の確認
 B 酒造地帯の水の発酵力のテストの継続。ミネラル成分と発酵力の関係解明。たくさんのデータを得る。
    西条酒造地帯の水は、まれにみる潜在発酵力を有する貴重な水質であることの科学的確認及び証明
■その他の活動
  1 平成16年12月 広島大学公開講座(RCCテレビ)への参加。12月4日放映
  2 平成17年 3月 日本水環境学会で口頭発表(千葉大学) 論文投稿中
     

平成17年度
■調査内容:水質調査、水量調査の継続
平成17年度も引き続き、龍王山憩いの森周辺、はんのう川、山麓地帯、西条酒造地帯の水質分析、並びに龍王山名水、龍王山、はんのう川の流量調査を春、夏、秋、冬につき四回行った。
■調査結果・明らかになったこと
 @総括:平成15年、16年とほぼ同じ結果が得られ、龍王山水源地帯の軟水の名水が、流れ下るに従って次第に汚染されてくる状況を再確認した。
 A水量:森林整備により平成15年度よりはやや増加した傾向を認めたが、平成17年度は雨が比較的多く、継続調査が必用である。
 B水質:龍王山山麓、西条酒造地帯での井戸水の水質分析の結果から、龍王山からの軟水が、高田流紋岩地帯を地下水として流下するうちに、次第に硬度が上昇し、酒造地帯で醸造に最適の中硬度の水質に変化することを再確認した。
このことは、平成16年に認識したのであるが、本年度の調査でも同じ結果が得られたことは、龍王山の土質と水質の密接な関係が示唆される。
■今後の課題:現在、龍王山及び山麓の土質の成分解析を行っており、平成18年度から土質と西条酒造地帯の水質並びに森林整備の水質への影響の関係解明を進める。
■ 西条酒造地帯の水の醸造への影響
なぜ、西条の水は酒造に良いのか、広島の軟水醸造法との関係はなどを解明するため、龍王山名水山麓の井戸水、酒造地帯の井戸水を用いて、麹からミネラル溶出試験を昨年に引き続き詳細に行った。
その結果、総はぜ、つきはぜ型の麹に分類して、ミネラルの溶出試験を行った結果、総はぜ麹を用いた場合は、龍王山名水の硬度1度の軟水でも十分ミネラル(Ca、Mg)の溶出が確認され、発酵もエビアン水(硬水)と同等の発酵力を示すことが明らかになった。
また、西条酒造地帯の中硬度水では、総はぜ麹ではミネラルの溶出は十分であったが、つきはぜ麹を用いた場合は、中硬度水ミネラルの溶出が一時的に阻害され、遅れて溶出されてくること。
この両者の溶出液での発酵試験を行った結果、エビアン水と同等の発酵を示すことが新規に明らかになった。
山麓の井戸水は、龍王山名水と西条酒造地帯の井戸水との中間的なミネラル溶出を示すが、発酵力は十分で変わらないことが示された。
すなわち、龍王山名水の軟水でも総はぜ麹を使うと十分発酵が行えること。また、硬度の高い酒造地帯の水では、つきはぜ麹を使うと発酵を遅らせることができ、長期発酵も可能となりあの香のよい西条酒を造り得ることが新規に認められた。西条の水は、発酵の制御しやすいバランスのよい貴重な水質であるといえるのではないか。
このことは、平成17年11月開催の「日本生物工学会全国大会(つくば国際ホール)」において発表している。



2 龍王山憩いの森一帯の種多様性と植生管理
  <理事・運営委員長:中越信和(広島大学大学院国際協力研究科 教授>

  平成14年度以前
里山の放棄が進む中、森林管理が植物に与える影響を調べることは難しく、山林整備が生物多様性に与える影響を長期にわたり追跡し、その効果を明らかにすることは、重要である。
山林整備が森林の植物群落(主に種組成)に与える影響を調査した。

■野外調査の方法
植物社会的な森林調査、毎木調査
■調査結果のまとめ。
1 種組成 山林整備により龍王山の赤松林の種組成は、大きく変わった。
2 種多様性 森林整備により接地植物・地中植物・1,2年生植物が増加し、種の多様性が増加した。
龍王山は、様々な森林整備のため、今までの赤松林の種組成が大きく変化した。
調査の結果、龍王山では森林整備によって今までの種組成とは異なるが、多様性は維持されていることがわかった。
また、龍王山には赤松の若齢林があるため、施業を続け、赤松林特有の種を維持することも可能であると考えられる。

■調査結果を論文としての出版
 「松枯れ後の植生管理が種組成に与える影響、ランドケープ研究」 551−554

     


  平成15年度
■調査内容:松枯れや森林管理の形態が土壌や土壌微生物に与える影響を調査した。
■調査結果:
1 松枯れの影響や森林整備が土壌に与える影響
土壌を調べることは、森林の物質の循環を明らかにする上で極めて重要で在る。
ポイントは、間伐や下刈りなどで明るくすることで土壌環境がどのように変化するかということである。
2 調査方法
赤松の植林地(6年目10年目)、赤松林(放棄)、松枯れが進行した林を調査地とし土壌の微生物、炭素、微生物量、土壌の物理・科学的特徴を調べた
3 調査結果
・赤松林(放棄)では、最も微生物相が豊富だが、微生物の現存量は少ない。
・赤松林(放棄)では、落葉落枝の分解速度が最も遅い。
・赤松の植林地では、植林後6年の場所より10年の場所の方が微生物相と微生物量が豊富であり、更に、落葉落枝の分解も早かった。
・また、全炭素と全窒素が微生物バイオマスと微生物の豊富さに高く相関していた。
・落葉落枝の分解速度とバイオマス炭素は林への入光量の違いに高い相関を持っていた。
4 考察
植林地の結果から、森林の発達に伴って土壌に炭素と窒素が蓄積され、微生物も豊かになるが、赤松(放棄)林の結果から、発達しすぎて「荒れた森林」では、様々な微生物が共存するが全体の量は減り、落葉落枝の分解速度も遅くなる。しかし、山のグラウンドワークのような活動によって、このような森林を施業し明るくすることで、バイオマス炭素を増加させ落葉落枝の分解速度を速められることがわかった。
■調査結果の発表
「松枯れ後の異なる管理履歴の場所における微生物の現存量とその量的な豊富さ」

  平成16年度
■調査内容:新たに松枯れ後の森林管理が植物社会のルールに与える影響を調査
研究の目的:松枯れ後の異なる管理履歴の影響を受けた土壌の微生物炭素、微生物量、土壌の物理・科学的特徴を明らかにすることである。
★研究のために4地点の調査区を設定
○調査区1 6年目の植林地で、ここ6年の間施肥と年一回の殺虫剤の散布を行っている場所である。
        この植林地では始めの4年間は、下刈りが行われていたが4年後に止められた。
○調査区2 10年目の植林地で、年1乃至2回の間引きと年一回の下刈りが行われている。
        これらの二つの場所は、松涸れ後に完全に森林を破壊し、赤松の植林を行った場所である。
○調査区3 松枯れの影響をこれまで全く受けたことのない赤松林(管理はされていない。) 
○調査区4 現在、松枯れによって影響を受けている森林である。
■松枯れ後の管理施業が森林群落に与える影響
山のグラウンドワークのような森林施業は、森林の立木密度を小さくし、林床を下刈りがりする。
このような明るい疎な森林では林床にたくさんの種が進入し、明るい林に多様な種が共存するようになる。
調査のポイントは、施業によって森林の植物社会の構造とルールがどのように変わり、どのようにして多数の植物が共存できるようになるかを明らかにすることである。
■方法
松涸れ後放置された森林と間伐・下刈りによって施行された森林を一箇所ずつを調査区(10×10)とした
■結果
・松枯れ後の森林では40種、施業林では1.5倍の60種の植物が確認された。
・植物の空間占有量は、松枯れ後の森林では233立方メートル、施業林では約半分の113立方メートルだった。
・また、施行後の森林では、中下層には全体の6.5%しか植物の占有空間が配分されていなかった。
・植物(種)が繁る空間に注目した場合、松枯れ後の森林では植物社会を構成する種は優先種から劣位種まで順に「26.5%の歩合で上前をはねる関係」になっていることがわかった。
・また、施業の森林の中下層木では、この歩合が小さく16.1%であることがわかった。
■考察
植物の社会では、限りある空間に多種が葉を茂らせて共存しているが、この全体の空間を「取り分」として優先種から劣位種にいたる順に「上前をはねる」関係で分け合っていることを把握できた。
更に、施業林では林床の少ない空間を多数の種が「小さな歩合で分け合う」ことで共存していることがわかった。


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