人類は、地球環境を保全し、他の生物と調和を図る責任を持っている。特に獣医師は、動物の健康に責任を有するとともに、人の健康についても密接に関わる役割を担っており、人と動物が共存できる環境を築く立場にある。
獣医師は、また、人々が潤いのある豊かな生活を楽しむことができるよう、広範多岐にわたる専門領域において、社会の要請に積極的に応えていく必要がある。
獣医師は、このような重大な社会的使命を果たすことを誇りとし、自らの生活をも心豊かにすることができるよう、高い見識と厳正な態度で職務を遂行しなければならない。
以上の理念のもとに、私たち獣医師は、次のことを誓う。
1 動物の生命を尊重し、その健康と福祉に指導的な役割を果たすとともに、人の健康と福祉の増進に務める。
2 人と動物の絆(ヒューマン・アニマル・ボンド)を確立するとともに、平和な社会の発展と環境の保全に務める。
3 良識ある社会人としての人格と教養を一層高めて、専門職としてふさわしい言動を心がける。
4 獣医学の最新の知識の吸収と技術の研鑽、普及に励み、関連科学との交流を推進する。
5 相互の連携と協調を密にし、国際交流を推進して世界の獣医界の発展に務める。
動物と人の健康は一つ。そして、それは地球の願い。
1 地球的課題としての食料・環境問題に対処する上で、生態系の保全とともに、感染症の防御、食料の安定供給などの課題解決に向け、「人と動物の健康は一つと捉え、これが地球環境の保全に、また、安全・安心は社会の実現につながる。」との考え方(ON WOrLD-ONE HEALTH)が提唱され、「人と動物が共存して生きる社会」を目指すことが求められている。
2 一方、動物が果たす役割は、食料供給源としてのほか、犬や猫等の家庭動物が「家族の一員・生活の伴ろ」として国民生活に浸透するとともに、動物が人の医療・介護・福祉や学校教育分野に進出し、また、生物多様性保全における野生動物の存在など、その担うべき社会的な役割は重みをますとともに、一層多様化してきている。
3 他方、国民生活の安全・安心や社会・経済の発展を期する上で、食の安全性の確保や口蹄疫、トリインフルエンザ、狂犬病等に代表される新興、再こう感染症に対する備えとともに、家庭動物の飼育が国民生活に普及する中で動物福祉に配慮した適正飼飼育の推進が、更には、地球環境問題としての生物多様性の保全や野生鳥獣被害対策を推進する上での野生動物保護管理に対する関心が高まって来ている。
4 我々、獣医師は、「日本獣医師会・獣医師倫理綱領 獣医師の誓いー95年宣言」が規定する専門職職業倫理の理念の下で、動物に関する保健衛生の向上と獣医学術の振興・普及を図ること等を通じ、食の安全性の確保、感染症の防御、動物疾病の診断・治療、更には、野生動物保護管理や動物福祉の増進に寄与するとの責務をになっている。
5 獣医師会は、高度専門職業人としての獣医師が組織する公益団体として、獣医師及び獣医療に対する社会的要請を踏まえ,国民生活の安全保障、動物関連産業界の発展による社会経済の安定、更には、地球環境の保全に寄与することを目的に、「動物と人の健康は一つ。そして、それは地球の願い。」を活動の理念として、国民及び地域社会の理解と信頼の下で、獣医師会活動を推進する。
FAVAは、アジア太平洋23カ国の獣医師の連合体で、同じように医師会の連合体である、アジア大洋州医師会連合(CMAAO)があり、8月にフィリピン・マニラでこの両者によるワンヘルスに関する合意に調印する。そして、世界獣医師会と世界医師会でも連携する機運が高まり、感染症等については、分野横断的に取り組みが必要で、中心的担って行きたい。
2026年に東京で開催する世界獣医師会大会(WVAC)を、世界医師会との連携を結実する機会としたい。
WVAの次期会長就任祝賀会でもご厚意をいただき、さらに躍進出来るように、考えている。
マイクロチップでは、獣医師の役割を明確にし、適正な運用により、国民の利益になるように努力する。
犬の登録・と予防接種の維持・向上は、しっかりと取り組む。
事務・事業の見直し、財政の健全化についても、執行部で優先的に取り組んでいる。
中間監査においても、適正に処理が行われているという評価をいただく。また、災害等に対する一部資金の留保を検討。
令和6年(2024年)10月25日第46回アジア獣医師会連合(FAVA)総会の開催で、藏内会長から大韓獣医師会ホ・ジュヒヨン会長に、バトンタッチし、会長交代式に、岸田前総理から「ワンヘルスは世界的に大事な課題と思っており、自分はG7広島サミットでも取り上げた。今後、獣医師会を中心に取り組んでもらいたい」。とのビデオメッセイジをいただく。
藏内会長のリーダーシップにより成長したワンヘルスを引き継いで行く。メンバー全員の協力を願う。次回の総会は、タイのバンコク、2026年はフィリピンのセブ島、27年は台湾、28年はアラブ首長国連邦での開催が決定。
2024年10月23日大田コンベンションセンター(韓国大田広域市)において第46回アジア獣医師会連合大会(FAVA大会2024)代表会議が開催された。FAVAは、アジア太平洋の国々の27団体で構成される国際組織であり、アジア地域における獣医療の向上と動物福祉の推進を目的にしている。会議は、ホスト国である大韓獣医師会のホ・ジョヒョン会長、世界獣医師会(WVA)のジョン・デヨン会長、FAVA会長として藏内勇夫会長の挨拶により開始された。藏内会長のプレジデントレポートでは、任期中にFAVA役員所属国を全て訪問したことやオーストラリア獣医師会の継続加盟実現について報告された。また、世界獣医師会のジョン会長からは、世界獣医師会とのワンヘルスに係るMouの発展に関する合意について報告された。会長職の引継ぎ式では、藏内前会長からFAVAメンバー各国に対する感謝とともに、ワンヘルス福岡オフィスの設立やアジア大洋州医師会連合(CMAAO)とのワンヘルス協定締結等の成果について述べられた。これに引き続き、新FAVA会長となったホ会長は今後、藏内前会長のリーダーシップにより発展したワンヘルスの取り組みを継承し、地域のヒト、動物、環境の健康に寄与していく決意を表明した。なお、2025年の次期総会はタイのバンコク、2026年の次期大会はフィリピンのセブでの開催が決定している。
日本獣医師会・アジア獣医師会連合 会長 藏内 勇夫 氏世界獣医師会の次期会長への就任決まる
藏内会長は、2024年2月に実施された世界獣医師会(WVA)の「次期会長」に、日本人初の決定。次期会長の次には、会長、前会長とそれぞれ2年間、合計6年間の任期を務められます。
世界獣医師会(WVA)は、1959年(前身の団体は1853年から活動)に設立された世界70カ国の獣医師会や獣医学会が加盟する団体です。WVA戦略計画(2020〜2025)の中に、ワンヘルス・獣医学教育・動物福祉・動物用医薬品管理に対応しています。
藏内会長(日本獣医師会・アジア獣医師会連合・世界獣医師会 次期)のコメントは、
「貧困、経済格差の解消こそがワンヘルスの原点であり、これなくして地球を救うことはできない。このかけがえのない地球を未来の子供たちに確実に引き継ぐためにも、私の人生をかけて、世界においてワンヘルスを進める」
また、キャッチフレーズは、
「ワンヘルスを通じてより健康で持続可能な世界を築く」として、一つ目は
、包括的なワンヘルスイニシアチブであり、ワンヘルスの範囲を、人獣共通感染症と薬剤耐性を超えて、健康で持続可能な人間社会と環境を創造するものへと拡大する。
二つ目は、
産業の持続可能性であり、農業、自動車産業、半導体などの産業を未来の世代に向けて持続可能にするために、ワンヘルスの原則を活用する。
三つめは、
獣医職の向上であり、獣医師の社会的地位と認識を向上させることに取り組む。獣医師はワンヘルス枠組みで重要な役割はたしていると認識している。
四つ目は、
国際パートナーシップの強化であり、様々な国際機関との協力を強化し、WVAの認知度と社会的地位を向上させる。
さらに、メッセージとして、
動物愛護、野生動物の保護、畜産の振興、公衆衛生の向上、獣医学教育の充実、医師会との連携を日本とアジア太平洋州に広めてきた。この経験を基に、世界獣医師会の会長として世界に広めていきたい。さらに、県議会議員としてのキヤリアの多くを、ペットへのマイクロチップ装着義務化や動物看護師の国家資格化など、獣医分野を支える法的枠組みの整備に捧げて来ました。私は、ワンヘルスを一生涯取り組んでいく使命と考えています。私たち獣医師は、この職業を通じて世界をよりよくする能力を持っています。私は、ワンヘルスの概念が、この影響を生み出すためのプラットフォームを提供してくれると信じています。今こそ、世界中の獣医師が団結する時です。
世界獣医師会の組織と沿革
設立の背景:世界獣医師会(WVA)は、1959年に設立、その起源は1863年に開催された最初の国際獣医会議にさかのぼります。当時の目的は、家畜の輸出入に関する共通の規則を設定し、動物疾病の国際的な拡散を防ぐことにありました。これが現在の国際的な獣医師連合へと発展する礎となる。
組織の進化:WVAは、獣医師の権利の擁護と動物の健康及び福祉の向上を使命とし、全世界の獣医師が協力し合うプラットホームを提供しています。また、国際的な公衆衛生の向上にも寄与し、ワンヘルスの概念を推進しています。
直近2年間の主要な活動:2022年は、WVAはWHO,FAO,WOAH,UNEPといった国際機関との協力関係を強化。特に薬剤耐性(AMR)に対処するための多国間プラットフォームに参加し、ワンヘルスアプローチを推進しています。
2023年は、動物医薬品を世界中の獣医師が入手できるようにする取り組み、なた世界の獣医学教育水準を高める活動が注力されました。また、動物福祉に関しては、災害時の動物保護の重要性を訴えました。
日本獣医師会の主な国際活動の歩み
昭和25年(1950年):戦後初の全国獣医師大会を大阪市の中之島公会堂で開催、約2,000人の会員が参加し、15名のGHQ関係獣医官も参加、獣医業の新時代の到来を印象づける大会となる。
昭和28年(1953年):世界獣医師会(WVA)に正式加盟、国際獣医師団体として活動を本格化。
昭和53年(1978年):日本獣医師会とフィIリピン獣医師会が中核となって、アジア獣医師会連合(FAVA)が発足、2月にマニラにて第1回大会を開催、日本から35名の代表団が参加。
昭和55年(1980年):日本獣医師会 椿 精一会長がアジア獣医師会連合(FAVA)会長に就任。
昭和62年(1987年):日本獣医師会 杉山 文男会長がアジア獣医師会連合(FAVA)会長に就任。モントリオールで開催された第23回世界獣医師会大会で第25回大会の開催に立候補。日本獣医師会にWVAC招致準備委員会を設置。
平成3年(1991年):リオデジャネイロで開催された世界獣医師会総会で次回大会の開催地として日本が選ばれる。
平成7年(1995年):神奈川県横浜市で第25回世界獣医師会大会及び第20回世界小動物獣医師会大会を開催。1万1654名が参加し、これまでの参加国数及び参加者数で過去最大の規模となる。アジア地域初の開催であり、多方面から高い評価を得る。
平成10年(1998年):国内外の獣医師と連携し、獣医学教育の国際水準の強化、動物愛護管理法の改正に関する活動を推進。
平成19年(2007年):「2007動物感謝デーIN TOKYO」を開催し、世界獣医師会が提唱するWORLD VETERINARY DAYの趣旨に沿って動物への感謝と認識を高めるイベントを開始。
平成27年(2015年):マドリードで開催された第1回世界獣医師会ー世界医師会「ONE HEALTHに関する国際会議に日本医師会とともに参加」。日本医師会 横倉会長と日本獣医師会 藏内会長が講演。
平成28年(2016年):第2回世界獣医師会ー世界医師会「ONE HEALTHに関する国際会議」を福岡県北九州市で開催。世界獣医師会(WVA)、世界医師会(WMA)、日本医師会(JMA)、日本獣医師会(JVMA)の4者による福岡宣言に調印。
また、同年よりJRA畜産振興事業の助成を受けてアジア地域臨床獣医師等総合研修事業を再開し、以降毎年10〜16名のアジア各国で産業動物の越境性感染症防疫に関心のある獣医師の育成を支援。
平成30年(2018年):神奈川県横浜市で開催された日本獣医師会獣医学術学会年次大会において、日本、韓国、台湾による東アジア三か国獣医師会サミットが開催される。
令和4年(2022年):日本獣医師会 藏内勇夫会長がアジア獣医師会連合(FAVA)会長に就任。「第21回アジア獣医師会連合(FAVA)大会」を福岡県福岡市で開催。FAVA加盟各国によるアジアワンヘルス福岡宣言に調印。
令和6年(2024年):藏内勇夫会長が次期世界獣医師会会長に就任。
アジアワンヘルス福岡宣言2022
ワンヘルスは、動物と人の共生社会づくり、生物多様性や環境の保全等によって、地球や社会の持続的な発展を目指している。現在、世界では、COVIT-19、新型インフルエンザ、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など人と動物の共通・新興感染症の国境を超えた発生や、薬剤耐性(AMR)が大きな課題となっている。このようなことから、FAVA加盟国は、連携・協力してワンヘルスを実践しなければならない。我々FAVA加盟獣医師会及び所属する獣医師は、ワンヘルスの先進地である福岡県において開催されたワンヘルスアプローチを一層発展させ、その実践活動をアジア・オセアニア地域から世界に向けて発信することを決意し、以下のとおり宣言する。
1.新興・再興感染症を含む人と動物の共通感染症の予防蔓延防止に万全を期するため、感染源、感染経路及び宿主対策についての調査・研究体制を整備するとともに、情報の共有に努める。
2.薬剤耐性菌が医療と獣医療において重大な脅威となっていることから、抗菌剤の慎重かつ適正な使用を徹底し、薬剤耐性(AMR)対策を推進する。
3.動物と人が共生する社会を構築するため、生物多様性の維持や地球環境の保全を積極的に推進する。
4.獣医学教育の更なる整備及びワンヘルスアプローチによる国際連携により、WOAH(OIE)Day one competencies(獣医師が具備すべき知識・技能・態度)を有する獣医師の育成に取り組む。
5・医療関係団体、行政機関、市民団体及び大学、WVA,WOAH(OIE)、WHO、FAO、UNEPなどの国際機関と協力し、ワンヘルスの課題解決と推進に取り組む。
6.アジアにおけるワンヘルスの課題への研究と児童、生徒及び市民に対するワンヘルス教育の普及のために、FAVA活動の拠点を整備・強化する。
ワンヘルス(ONE HEALTH)とは、人と動物、環境は相互に密接な関係があり、それらを総合的に良い状態にすることが真の健康であるという考えです。
-ヒトもどうぶつも環境も微生物と一緒に生きています-
細菌、菌類、ウイルスなどの微生物は地球のあらゆる所に存在します。微生物は動物の死骸やフン、枯れ葉等を細かく分解します。そして、その分解物が土に還って動植物の栄養分になります。地球の環境は、びせいぶつが動植物の命の循環を巡る事でバランスが保たれています。私たちヒトの体には約100兆個の微生物が常在しているといわれています。常在する微生物は、体内に入ってきた病原体(細菌、ウイルス、寄生虫等)に抵抗して発症を防ぐ等の働きをします。また、腸内環境を整える微生物として知られる善玉菌(乳酸菌、ビフィズス菌など)は、下痢や腹痛を起こすような悪玉菌の増加を押さえます。さらに微生物は汚染された土壌や水等の浄化、生ごみの分解など環境のためにも役立っています。このように微生物は私たちにとって欠かせない存在です。一方で、ヒトや動物の健康を妨げる微生物もいます。細菌などの病原体はヒトや動物の体内に入ると感染症を起こす恐れがあります。細菌による感染症の治療には抗生物質などの抗菌薬が使われますが、薬の不適切な使用によって薬剤耐性菌が生き残ることがあり、薬剤耐性菌が大きな問題になっています。抗菌薬はは家畜の病気の治療や予防、そして家畜の成長促進のために、畜産や水産でも使われています。家畜の飼料に混ぜる事もあります。不適切な抗菌薬の使用により生じた薬剤耐性菌は、畜水産業で働くヒトへの感染や、畜産物や水産物を通じて人に拡散する恐れもあります。このような事から、農家や獣医師をはじめ、多くの関係者により薬剤耐性菌を増やさないように様々な取り組みが進められています。薬剤耐性菌に汚染されていない安全で安心な食品を生産、販売、消費することが大切です。
-環境が破壊されると人と動物の健康被害につながりますー
世界規模では、地球温暖化により、北極や南極の氷河が溶け海面が上昇したり、雨が降らずに農作物が取れなくなったりといった現象が起こっています。近年の日本でも最高気温が35℃以上になる猛暑日が増加し、強大化した台風や集中豪雨等の災害が発生しています。地球温暖化はヒトや動物の健康面でも大きな影響を与えます。気温が上がることで、熱中症をはじめ消化器系の病気にかかったりします。さらに気温上昇に加え雨量が増えることにより、感染症の媒介となる蚊の発生やネズミ等の数が増える事にもつながります。また、動植物の絶滅や分布の変化等も起こっています。南米やアフリカ、東南アジアを中心に世界の森林面積が減少しています。人が森林を開拓する理由としては、農地や牧場として利用したり、違法に伐採した木材を販売したりするケース等が挙げられます。しかし森林を開拓=破壊することは、地球温暖化を加速させることにつながり、災害も発生しています。また、多様な植物や野生動物が生きている森林の奥地には、密かに生息する微生物もいます。森林破壊は、森林の奥地に生息する微生物と人が遭遇する機会が増え、新たな感染症が発生する恐れにつながります。行き過ぎた森林伐採を見直すなど地球環境を守ることは、私たちの健康につながります。
地球温暖化
未来の地球について考えたことがありますか?地球では私たちが便利で快適な生活が送れるようになる一方で、様々な環境問題が起きています。例えば、海面水位の上昇により道路の冠水や建物への浸水(太平洋の島国 ツバル・フィジー等)あるいは、強大化したハリケーンによる家屋の倒壊(中米 ホンジュラス、国内の台風でも被害が甚大)。これらは地球温暖化が引き起こしたものです。海面上昇や異常気象の増加といった現象として現れています。
1.地球温暖化とは?
地球の表面は、太陽により温められており、これらが反射して、宇宙に出ていくと地球の表面温度は、ー19℃になるといわれています。実際は、地球の平均温度は、約14℃に保たれています。それは、二酸化炭素などの「温室効果ガス」が熱の放出を抑えているからです。(温室効果ガス等に反射して地球の表面にはねかえる)「地球温暖化」は、この「温室効果ガス」が空気中に増えすぎた結果、地球の平均気温が上昇する現象です。
温室効果ガスには、主に二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロン等がありますが、最も大きな割合は、二酸化炭素(CO2)です。二酸化炭素は、ガス・石油・石炭等の化石燃料を燃やすことで発生します。このため、私たちが大量の化石燃料を燃やしてきたことが原因です。また、森は、二酸化炭素を吸収しますが、これらの木々を伐採したことも一因です。
2.地球温暖化の影響
干ばつの増加、雨量の増加、南極等の氷が解ける、海面上昇、山火事の発生、猛暑日が増える、台風の強大化、動植物の絶滅、生態系の変化等です。
3.地球温暖化対策
世界中で取り組みが行われています。地球温暖化に関する国際交渉は、1990年代から行われ、1992年には、地球温暖化防止に向けた国際的な枠組みを定めた条約「気候変動に関する国連枠組み条約(UNFCCC)」が採択されました。1997年には、京都で開かれた「気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)」で、京都議定書が合意されました。これは、先進国に法的な拘束力のある削減目標を定めたものです。
パリ協定の採択・発効
2015年12月、フランス・パリで開催された「気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)」において、先進国・開発途上国の区別なく、全ての国・地域が参加する、歴史上初めての合意となった「パリ協定が」が採択されました。「パリ協定」は2016年11に発効し、日本も同月にに批准しました。
パリ協定の内容
今世紀末の世界の平均気温上昇を産業革命前から2℃よりも低く保つ。全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新する。
日本の取り組み
日本は、パリ協定を踏まえ、気温上昇を1.5℃に抑えるため、2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、2050年カーボンニュートラル宣言を行いました。2050年の目標達成に向けて、中期目標として、2030年度において温室効果ガスを2013年度比46%削減することを目指し、脱炭素の取り組みを進めています。
地球温暖化対策
緩和策:地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量の削減や二酸化炭素の吸収源の増加を図ることをいいます。具体的には、自転車での移動手段、電気をこまめに消す、LEDや省エネルギー製品を買う、再生エネルギーの導入、森林整備、環境に優しい住宅を選ぶ。
適応策:地球温暖化による悪影響の軽減や回避を目指して、対策を行うことを言います。防止をかぶる、日傘をさす、防災グッズを備える、品種改良をおk内、気温の変化や病気に強い農作物を作る。洪水対策、がけ崩れ対策、ヒートアイランド対策等。
私たちができること
家庭から排出される二酸化炭素の約半分は、電力によるものです。節電等の省エネルギーに取り組む事で地球温暖化の防止につながります。家庭でのエネルギー消費の約3割りが「給湯」です。LEDに取り換える。
適応策:服装の工夫、「熱中症」の予防、「安全な場所」の確認。
*地球を大切にしよう!
地球の未来を考えて、一人ひとりできることをしましょう。
温暖化防止をしよう。
環境に優しい行動をしよう。
それまで「ワンヘルス」を推進してきた、WHO(世界保健機関)、FAO(国連農業機関)、OIE(国際獣疫事務局)に、2020年11月、新たにUNEP(国連環境計画)が参加し、生態系の健全性を守る視点が強化された。
直近でのワンヘルスに係る動向
・2022年11月に福岡で開催した第21回アジア獣医師会連合(FAVA)大会「アジアワンヘルス福岡宣言2022」を採択
・2023年4月台湾で開催された世界獣医師大会(WVAC)において、FAVA・日本獣医師会 会長 蔵内勇夫氏が「WVA会長からワンヘルス特別賞」受賞
・2023年5月「G7広島サミットの首脳宣言」にワンヘルス適用アプローチが表明
・日本政府が2023年6月に閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」にもワンヘルスアプローチを盛り込む。
・2023年8月「FAVAワンヘルス福岡オフィス(FOF)の開設
・2023年11月に日本獣医師会から自由民主党ワンヘルス推進議員連盟 会長 林芳正様へ「ワンヘルス施策の推進」に関する要請
ワンヘルスに期待される効果(推察)
例えば、この度のコロナでは、(世界経済の損失について、IMF(国際通貨基金)が、パンデミック前の予測と比較し、生産高の累積損失を(2020〜2021年の合計が11兆ドル(約1,180兆円)と予測している)
世界保健機関(WHO)の東南アジア地域顧問を努める、ギャネンド・ゴンガル博士は、「ワンヘルス」アプローチを適用すれば、パンデミックの予防に係るコストは2%に過ぎない。
東広島市民の皆様へ
現在、地球上では、人による生態系に影響を及ぼす行為が繰り返され、様々な環境問題や感染症の問題が発生しています。
私たち一人ひとりが、人と動物と自然環境の共生づくりを、地球規模で考え、地域で行動していくことが、求められます。
人と動物の共通感染症対策をはじめとする「ワンヘルス」をともに考え、実践していきましょう。
ワンヘルス推進における東広島市民の皆様へのメリット
1.人間、動物、環境の健康の向上
ワンヘルスの取り組みにより、地域全体の健康が向上します。
2.疫学的リスクの低減
新興・再興感染症や抗生物質耐性の問題に対処し、地域住民の安全を確保します。
3.経済的なメリット
健康な環境が持続可能な経済発展や観光産業に寄与し、地域経済にプラスの影響をもたらします。
4.リソースの効率的な利用
異なる分野の専門家や組織が協力し、知識や技術を共有することで、効率的なリソースの活用が可能になります。
5.コミュニティーの連帯感向上
地域住民が共通の目標に取り組む事で、コミュニティーの連帯感が高まります。
6.持続可能な開発目標(SDGS)への貢献
ワンヘルスの取り組みは、環境、健康、食料安全、持続可能な農業等、多くのSDGSに貢献します。
7.国際的評価の向上
ワンヘルスイニシアチブの成功は、地域や国の国際的な評価を高めることができます。
8.他の地域との協力・交流
ワンヘルスイニシアチブは、他の地域や国との協力や交流を促進し、共通の課題に取り組む機会を増やします。
9.地域住民の意識の向上
ワンヘルスの取り組みは、地域住民の健康や環境に対する意識が高まり、持続可能な行動への変化を促します。
10.災害や緊急事態への対応力の向上
ワンヘルスのアプローチは、地域の災害や緊急事態に対する対応力を向上させる事ができます。
「ワンヘルス」と「SDGS]
SDGS
2015年に国連サミットで採択され、加盟国が2030年までに達成するために掲げた「SDGS(エス・ディー・ジーズ)=(持続可能な開発目標)」には、「ワンヘルス」の課題や目標と重なるところがあります。
この課題や目標を達成するために、自分にもできることを考え、行動してみてください。
1.人と動物の感染症対策
・手洗い、せきエチケット、口腔ケアによる感染予防・防止
2.薬剤耐性菌対策
・用法用量を守った薬の服用
・薬を飲み切り,あげない、残さない
3.環境問題
・自家用車の使用を控える、排気ガスを削減
・節電・省エネに取り組む
・ゴミのポイ捨てをしない
4.人と動物の共生社会づくり
・ペットの予防接種や健康診断
・マイクロチップを活用したペットの迷い子防止
・野生動物への餌付けをしない
5.健康づくり
・ハイキングなので自然と触れ合う
・森林浴でリフレッシュする
・動物園や水族館に出かける
6.環境と人と動物のより良い関係づくり
・広島県産の食べ物を積極的に食べる
・食品ロスの削減(買いすぎない、作りすぎない、注文しすぎない、食べきる)に努める
新型コロナウイルス感染症は、私たちの社会のあり方を根本から見直し、変えることとなりました。私たちは感染症とともに社会を維持していくことを覚悟しなければなりません。 感染症から人々の生命と健康を守りながら、感染症による生活と経済への影響を最小にする対応が求められています。また、全国的に発生している記録的な猛暑や豪雨災害により、私たちは、自然環境が暮らしや健康に直結していることを実感しているところです。
そしてワンヘルスは、感染症や自然環境保護だけではありません。例えば、最近の少子高齢化社会を迎え、健康への関心が一段と高まる中で、健康づくりや、ペットによる人への癒しや生きがいへの貢献、人と動物との共生社会づくりといった、とても広い考えと実践です。
生態系が健康でなければ、そして、自然環境が保全されていなければ、私たちの健康もあり得ません。ワンヘルスは、人間中心主義から、共生社会への転換でもあります。50年前には想像もできなかった規模でグローバル化が進み、人々はその恩恵を受けるとともに、生活が一変するリスクも抱えています。私たちが持続的に社会を維持し、次の世代に受け継ぐためには、ワンヘルスの理念と実践が必要です。
食育・食品ロス(東広島市民の川柳)
東広島市は毎月19日は食育の日
会話して 明るい食卓 いい笑顔
食で元気に 感謝でつながる 東広島市
毎日の朝食で いきいき スタート
いただきます 命をつなぐ 合言葉
川柳コンテスト(食品ロス)
食品ロス のしていいのは 感謝だけ
量り売り きみのやさしさ はかっている
食品を 捨てすぎず 買いすぎず
感謝して きれいに食べると ゴミも減り
食材を救うヒーロー てまえどり
ごちそうさま お皿で見せる ありがとう
買い物は 足し算よりも 引き算で
買いだめは 得したようで ロスまねく
ワンヘルスは、6つの項目からなっている。
1 人と動物の共通感染症対策
・人に感染する病原体は、1,400種以上
・動物から人へ、人から動物へうつる病気を「人と動物の共通感染症」
・感染を防ぐには、感染源、感受性者、感染経路対策
2 薬剤耐性菌対策
・抗菌薬がきかない
・結核、マラリア
・普及啓発、動向調査、感染予防、適正使用、研究開発を実施
3 環境保護
・森林や生態系の破壊が、気候変動の一因
・温暖化・沸騰化
・急速な開発による微生物との遭遇
・次世代への引継ぎ
4 人と動物との共生する社会づくり
・アニマルセラピー
・療育、学校飼育動物・多頭飼育崩壊予防・犬や猫の殺処分減少
・登録、狂犬病ワクチン接種、健康診断
5 健康作り
・主観的健康感、QOLの向上、健康寿命の延伸
・健全な環境での健康維持
6 環境と人と動物のよりよき関係づくり
・安全安心な農畜産物・食育と地産地消
・家畜の健康は、人の健康につながる
上記6項目の説明をいたします。
1.動物由来感染症
動物由来感染症とは
「動物由来感染症」とは動物から人に感染する病気の総称です。人と動物に共通する感染症(ズーノウシス)は、「人獣共通感染症」や「人と動物の共通感染症」とも言われますが、厚生労働省は人の健康問題という視点から「動物由来感染症」という言葉をつかっています。世界保健機関(WHO)では、ズーノウシスを「脊柱動物と人の間を自然な条件下で伝播する微生物による病気又は感染症」と定義しています。
なお、「動物由来感染症」には、人も動物も発症するもの、動物には無症状で人だけが発症するもの等、病原体により様々なものがあります。
動物由来感染症が問題となる背景
背景には人間の社会環境の変化と行動の多様化があげられます。例えば、交通手段の発展による膨大な人と物の速やかな移動、人口の都市集中、土地開発と自然環境の変化、先進国では高齢者など感染抵抗力が弱い人々の増加や野生動物のペット化等であります。
そのような中、未知の感染症の出現(新興感染症)や、忘れられていた感染症が勢いを取り戻したり(再興感染症)しています。新興感染症の多くは動物由来感染症です。私たちは多くの生物と共存している事実を忘れずに、幅広い視野に立って感染症対策を立てていく必要があります。
世界では、たくさんの新しい感染症が見つかっています
世界では新しい感染症が次々に出現しています。そしてその多くは動物由来感染症です。それらの中には人への感染力も強く重症化する傾向があるもの、特異的な治療法がないもの、ワクチンが実用化されていないものもあります。(重症熱性血小板減少症(SFTS)、エボラ出血熱、マールブルグ病、中東呼吸器症候群(MERS)、ハンタウイルス肺症候群等)。
動物由来感染症は、世界保健機関(WHO)が確認しているだけでも200種類以上あります。また、生物テロにもしいられる可能性があるものとして、炭疽、ペスト菌、野兎病菌、ウイルス性出血熱の原因ウイルス等ががあります。いずれも動物由来感染症の病原体です。
ワンヘルス
動物から人へ、人から動物へ伝播可能な感染症は、すべての感染症の約半数を占めており、医師及び獣医師は活動現場で人獣共通感染症に折衝区するリスクを有しています。こうした分野横断的な課題に対し、人、動物、環境の衛生に関わるものが連携して取り組むワンヘルスという考え方が世界に広がって来ており、厚生労働省も、ワンヘルスの考え方を広く普及・啓発するとともに、分野間の連携を推進しています。
新型コロナウイルス感染症(COVIDー19)
中国で新たに報告された感染症です。全世界において人の感染が報告されています。新型コロナウイルスの保有宿主は不明ですが、竿の遺伝子葉入れてがコウモリ由来のSARS様コロナウイルスに近いため、コウモリがこの新型コロナウイルスの起源である可能性が示唆されています。
これまでに新型コロナウイルスに感染した人から犬、猫、ミンク、トラやライオンなどへの感染事例が報告されています。
新型コロナウイルスの主な感染経路は人から人への飛沫感染、エアロゾル感染や接触感染です。
2022年1月時点では、動物から人への感染事例は海外の農場でミンク〜感染したわずかな数に限られていますが、動物と接触する際には、室内の換気や手洗いを徹底し、過度な接触を控えることが大切です。
日本と世界の動物由来感染症
世界中の数多くある動物由来感染症のすべてが日本に存在するわけではありません。日本は世界の中では例外的に動物感染症が少なく、寄生虫や真菌による疾病を入れても数十種類程度と思われます。しかし、世界には非常に多くの動物由来感染症が存在しており、特に海外ではむやみに野生動物や飼い不詳の動物に触れてはいけません。
日本に動物由来感染症が比較的少ない理由
・地理的要因
日本は全体として温帯に位置しているため、熱帯・亜熱帯地域に多いい動物由来感染症がほとんどありません。また、島国であるため、感染源となる動物の周囲の国々からの侵入が限られています。これらの地理的要因のため、野生動物由来の感染症やマダニ・蚊等の節足動物(ベクター)が媒介する動物由来感染症が比較的少ないと思われます。
・家畜衛生対策等の徹底
日本では獣医学分野が中心となって、これまでに家畜衛生対策、ペスト(ネズミ)対策、狂犬病(犬)対策を徹底的に行ってきました。その結果、家畜のブルセラ病や牛型結核のような家畜から人に感染する病気でほとんど見られなくなったものや、ペストや狂犬病のように国内から一掃された動物由来感染症があります。
・衛生観念の強い国民性
日本人は、日常的な衛生観念が強い国民であるといわれており、手洗いの励行、食品の衛生的な取り扱い、ネズミ・ハエ等の対策などを積極的に行って来たことも関係があります。
2.薬剤耐性菌対策
2020年の日本での抗菌薬の使用量
医療用 | 502t |
家畜及び伴侶動物用 | 640t |
養殖水産動物用 | 208t |
抗菌性飼料添加物 | 235t |
農薬 | 136t |
薬剤耐性(AMR)対策の現状
・医療における薬剤耐性細菌の蔓延
・多剤耐性菌感染症における推定死亡数
2019年統計
年間12,136人が亡くなっている。
MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 3966人
PRSP:ペニシリン耐性肺球菌 106人
FQREC:フルオロキノン耐性大腸菌 4201人
3GCRKP:第3世代セファロスポリン耐性大腸菌 3009人
3GCRKP:第3世代セファロスポリン耐性肺桿菌 530人
CRPA:カルバペネム耐性緑膿菌 324人
世界的には、2019年AMRが原因で推定127万人が死亡
西サフラ以南のアフリカで最も多く、オーストラレーシアで最も少ない死亡者数
下部呼吸器感染症ではAMRに関連する死亡者が150万人以上と最も多い
*2050年にはAMRによる年間死者数が1000万人を超える予測。
(まさに静かなるパンデミック)
WHO抗菌薬耐性グローバル・アクション・プラン
(2015年5月WHO第68回総会採択)
目的:抗微生物剤に対する薬剤耐性と闘うために各国における行動計画の枠組みを提供
ワンヘルス・アプローチ
戦略的目標:
1.薬剤耐性に対する理解と意識の向上(普及啓発・教育)
2.研究とサーベイランスを通じた知識及び証拠基盤の強 化(サーベイランス)
3.効果的な衛生対策と感染症予防対策による感染症発 生例の低減(感染予防・管理)
4.抗微生物薬の人及び動物医療における適正化(適正使 用)
5.新医薬品、診断手段、ワクチン及びその他の治療方法 に対する投資の増加(創薬)
日時:2016年11月10ー11日
場所:北九州
福岡宣言
(1)医師と獣医師は、人と動物の共通感染症予防のための情報交換を促進し、協力関係を強化するとともに、その研究体制の整備に向け、一層の連携・協力を図る。
(2)医師と獣医師は、人と動物の医療において重要な抗菌薬の責任ある使用のため、協力関係を強化する。
(3)医師と獣医師は、「ワンヘルス」の概念の理解と実践を含む医学教育及び獣医学教育の改善・整備を図る活動を支援する。
(4)医師と獣医師は、健康で安全な社会の構築に係るすべての課題解決のために両者の交流を促進し、協力関係を強化する。
薬剤耐性対策アクションプラン(2016−2020)
1.普及啓発・教育
・国民・専門職への普及啓発・教育
2.動向調査・監視
・サーベイランス・モリタリングの強化
・ワンヘルスサーベイランスの実施
3.感染予防・管理
・感染予防管理の推進
4.適正使用
・医療における抗菌薬の適正使用の推進
・獣医療における慎重使用の推進
5.研究開発
・新たな予防法、診断法及び治療法開発に資する研究の推進
6。国際協力
・日本のリーダーシップ
薬剤耐性(AMR)対策アクションプランの6つの柱と動物分野の主な取り組み
1.普及啓発・教育
・畜水産関連の生産者団体等と意見交換
・普及・啓発ツールの作成
・獣医系大学生への普及・啓発
・各種業界誌等にリーフレットや記事を掲載
2.動向調査・監視
・人医療分野との連携強化、ワンヘルス動向調査報告書の公表(2017年度〜)
・養殖魚及びペットについて、全国的な動向調査を開始(2017年度〜)
・ペット分野について、ヒト用抗菌剤の使用実態調査を開始(2017年度〜)
・豚飼養農場におけるMRSA浸潤状況調査を開始(2017年度〜)
3.感染予防・管理
・飼養衛生管理の徹底による衛生水準の向上やワクチンの実用化・使用促進等を通じて、感染症を予防し、抗菌剤の使用機会を削減。
感染症を予防する動物用ワクチン等の開発・実用化のための事業を開始。(2017年度〜)
4.適正使用
・養殖魚への抗菌剤の使用に専門家が関与する仕組みを導入(2018年2月〜)
抗菌性飼料添加物について、ヒトの健康へのリスクが無視できると評価されたもの以外については指定を取り消す指針を決定(2017年3月)し、コリスチン及びバージニアマイシン(2018年7月)、リン酸タイロシン(2019年5月)、テトラサイクリン系(同年12月)の指定を取り消し
・コリスチンを2次選択薬化(2018年4月〜)
・農場毎ごとの抗菌剤使用実態の把握と指導体制について、国内外の実態調査等を踏まえ検討(2017年度〜)
5.研究開発
・抗菌性飼料添加物に頼らない飼養管理について技術的検証を開始(2017年度)
6.国際協力
・アジア地域各国のAMR検査担当者を対象とした技術研修・セミナーを開催(動物医薬品検査書)
・コーデックス委員会、国際獣疫事務局(OIE)、G7等の取り組みに積極的に参画し貢献
ワンヘルスの視点で注目される医療上重要な食用動物由来耐性菌
・フルオロキノン耐性大腸菌
・第3世代セファロスポリン耐性大腸菌
・プラスミド性コリスチン耐性大腸菌
・家畜関連型MRSA(LA-MRSA)
動物用抗菌薬のリスク管理措置例
抗菌性飼料添加物の指定の取り消し
・硫酸コリステチン(2018年7月)
・バージニアマイシン(2018年7月)
・リン酸タイロシン(2019年5月)
・テトラサイクリン(2019年12月)
動物用医薬品の二次的選択薬に指定
・硫酸コリスチン(2018年4月)
薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023−2027)成果指標
微生物の薬剤耐性率
人に関して
指標 | 2020年 | 2027年(目標値) |
バンコマイシン 耐性腸球菌感染症 の罹患数 |
135人 | 80人以下(2019年時点に維持) |
黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率 | 50% | 20%以下 |
大腸菌フルオロキノロン耐性率 | 35% | 30%以下 |
緑のう菌のカルバペネム耐性率 | 11% | 3%以下 |
大腸菌・肺炎桿菌のカルバ ペネム耐性率 |
0.1ー0.2% | 0.2%以下 |
動物に関して
大腸菌のテトラシクリン耐性率 | 牛19.8%、豚62.4%、鶏52.9% | 牛20%以下、豚50%以下、鶏45%以下 |
大腸菌の第3世代セファロスポリン耐性率 | 牛0.0%、豚0.0%、鶏4.1% | 牛1%以下、豚1%以下、鶏5%以下 |
大腸菌のフルオロキノロン耐性率 | 牛0.4%、豚2.2%、鶏18.2% | 牛1%以下、豚2%以下、鶏15%以下 |
抗微生物剤の使用量
ヒトに関して
指標 | 2020年 | 2027年(目標値) |
人口せん人当たりの一日抗菌薬使用量 | 10.4 | 15%減 |
経口第3世代セファロスポリン系薬の人口せん人当たりの一日の使用量 | 1.93 | 40%減 |
経口フルオロキノロン系せん人当たりの使用量 | 1.76 | 30%減 |
経口マクロライド系薬の人口せん人当たりの使用量 | 3.30 | 25%減 |
カルバペネム系の静注抗菌薬の人口せん人当たりの一日の使用量 | 0.058 | 20%減 |
動物に関して
畜産分野の動物用抗菌剤の全使用量 |
626.8t |
15%減 |
畜産分野の第二次選択薬の全使用量(第3世代セファロスポリン、15員環マクロライド(ツラスロマイシン、ガミスロマイシン)、フルオロキノロン、コリスチン) | 26.7t |
27t以下に抑える |
*AMR対策アクションプランの現時点でのまとめ
AMR対策アクションプランは間違いなく動物分野でのAMR対策を大きく前進させました。しかし、まだ多くの課題が残されており、この問題に係る全ての人の今後の活動に期待します。
動物から環境へのAMR伝播経路の一つとして、生産動物のふん尿由来とする堆肥がある。近年、イエバエ・ミミズ等を利用した堆肥化が注目、研究が進められている。実際、薬剤耐性大腸菌等を含む大腸菌数は大きく減少した。昆虫堆肥化は効果があり。他に、石灰窒素も有効。
*イエバエ幼虫を活用した堆肥に含まれる細菌数
大腸菌 | 10? | → | 102 |
テトラサイクリン耐性大腸菌 | 10? | → | 102 |
アンピシリン耐性大腸菌 | 10? | → | 102 |
細菌数(c当たりの数)、堆肥化日数7日
日本をAMR対策の最先進国へ!
3.環境保護
近年のグローバル化や大量の食料生産は、ヒトや動物にとって貴重な森林や生態系を破壊し、気候変動一因となっています。その一つ、地球の温暖化は熱中症のリスクを高めるだけでなく、豪雨や台風、山火事といった様々な災害の原因となり、ヒトだけでなく動植物にも大きな災いをもたらします。また、大規模な森林伐採や急速な開発による都市化はそれまでジャングルの奥地に生息していたウイルスなどの病原体と人が遭遇する機会となり、新しい感染症が発生する恐れがあります。重要なのは「ジャングルの奥地で密かに生息している微生物と人が接してはいけない」ということです。このように環境とヒト動物の健康は密接につながっています。自然環境は、ヒトも含めて多様な生物が生きる場です。良い環境と生物のすみ分けが保たれてこそ、ヒトや動物の健康が維持されます。健康にとって大切な環境を次の世代に引き継ぐ事も忘れてはならない事です。
現況では(2024年を振り返り)
気候変動の影響で、豪雨の発生や猛暑による被害が等がありました。温室効果ガスにより、地球規模でハリケーン、森林火災、洪水等大きな被害がもたらされ、それらは生態系に甚大な影響を及ぼしています。これらは長年、人類が化石燃料を使い、環境破壊をしてきた結果であり、その代償を払わなければならない状況です。
環境に配慮した農業の促進
日本は2021年5月に、みどりの食料システム戦略を打ち出し、翌年7月、みどりの食料システム法を施行した。柱は、温室効果ガスの発生量を抑制した農業の促進だ。日本に先だって、欧州連合(EU)では2019年にグリーンディール政策、米国では20年2月農業イノベーションアジェンダ(行動計画)を打ち出した。温暖化対策には農業の果たす割合が大きい事が背景にある。
みどりの食料システム法:この法律は、環境と調和のとれた食料システムの確立に関する基本理念等を定めるとともに、農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図るために行う事業活動等に関する計画の認定制度を設けることにより、農林漁業及び食品産業の持続的な発展、環境への負荷の少ない健全な経済の発展等を図るものです。
4.ヒトと動物との共生社会づくり
少子高齢化社会の中で、犬や猫、鳥、金魚等の愛玩動物(ぺット)は家族に一因として迎えられるケースが増え、伴呂として重要な位置を占めるようになりました。愛玩動物は、現代の高齢者にとってはともに老いていく仲間であり、子供にとっては、社会性を育むトレーナーでもあります。人は愛玩動物の健康を守る立場にありますが、逆に愛玩動物はヒトの健康づくりや生活の質(QOL)の向上に貢献しています。愛玩動物といると笑い顔や会話が増える、心が安まる等の癒し効果があるといわれており、また犬や猫をなでることでストレスが軽減され、心拍数や血圧が安定するといったデータもあります。このような事から、愛玩動物は医療や福祉、教育など様々な分野で活躍しています。一方で、犬や猫への虐待、過剰飼育・繁殖による遺棄や殺処分といった問題も起こっています。愛玩動物との関係をよりよく保つには、愛玩動物の重要性を理解し、飼育方法を熟知することが求められます。特に犬を飼育する場合は犬の登録と年に1回の狂犬病ワクチン接種が義務付けられています。このほか愛玩動物にはノミやダニ等の病原体が寄生する場合がありますので、定期的な駆除や健康診断など衛生管理も大切です。
5.健康づくり
健康は万人の願いです。WHO憲章によると「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあることをいいます」と定義しています。私たちは、年に1回以上の健康診断を受け、データによる健康状態を知ることが大冊です。しかし、全ての健康診断ダータが正常域にある人は少数ではないでしょうか。すぐに治療が必要な病気が見つかるケースもあります。健康診断により、病気になる前に生活習慣病を改善し発症前に防ぐこともできます。また、健康診断ダータに異常があり、何らかの病気を患っていても、より良き家族や隣人、仲間、愛玩動物に囲まれ、それぞれに自分の役割を務め、また趣味や生きがいを持つことによって醸成される「病気があっても、毎日それなりに元気で頑張っている」という健康感覚が大切だといわれています。これからの健康づくりは、家族や愛玩動物、環境とのつながりを大事にしなければなりません。私たちはヒトだけで生きているのではなく、健全な環境の中で、様々な動植物の中で健康を維持出来ているのです。
6.環境とヒトと動物のより良き関係づくり
環境とヒトと動物の間には、様々な微生物が行き来しています。ヒトや動物に病気をもたらす微生物がいる一方、ヒトや動物の体に有益な微生物もいます。乳酸菌やビフィズス菌、麹菌などを含む「善玉菌」とよばれる有益な微生物は、悪玉菌が増えるのを抑え、腸内細菌を整える働きがあります。この善玉菌なしにはヒトも動物も健康に生きていけません。そして善玉菌は、「食」によって体内に入ってきます。「食」を生産する環境を有害な物質に汚染されないことはいうまでもありません。例えば米や野菜等の農産物を作るためには、農地(大地)、太陽、水が必要です。また肉や卵、牛乳などの畜産物は、動物(家畜)の「いのち」から生まれています。家畜伝染病を予防し、安全な飼料を与えて家畜の健康を保つことは、ヒトの健康にのもつながります。農畜産物の生産には多くの人が関わっています。「安全・安心」な食づくりには、農畜産物の生産状況が直接確認できる地元で生産することと、これを支える様々な生業や職業を持続させる事が大事です。そして「何を食べるのか」「何を食べてはいけないのか」を学ぶ「食育」の推進も不可欠です。また、食品ロスを減らす事も重要です。
特集
・食卓と農の現場の距離を縮める取り組み
・「大人の食育」の推進
具体的な施策
・家庭、地域、学校・保育所などにおける食育
・生産者と消費者との交流
・食分化継承のための活動
・食品の安全性・栄養などに関する調査、研究、情報提供
農水省は令和7年3月25日、2024年度食育白書の概要案を示した。20,30代の若い世代で野菜や果物の摂取量が減るなど、高齢者を含めた各世代で食に関する課題を抱えていることを踏まえ、各世代の課題やニーズに対応した「大人の食育」を特集。
企業や大学による食育の事例を紹介する。同日、自民党食育調査会(山東昭子会長)などの合同会議に示した。
農水省によると、1週間のうち、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日に2回以上食べることが「ほとんどない」と回答した世代は23.1%。全世代平均の約2倍となっている。
白書では、学校などでの子供の食育だけでなく、自ら食生活を組み立てるようになる大学生や新社会人向けの食育を展開する必要性を提起した。
現在をいきいきと生き、生涯にわたって心も体も健康で、質の高い生活を送るために、「食べること」を少し考えてみませんか?自然の中で育った食べ物は、収穫され、加工され、食料品店やスーパーマーケットなどの店頭に並びます。私たちは、店頭にたくさん並んでいる食べ物の中から、選び、調理して、食べています。自然の中で育まれた食べ物は、私たちのからだの仲間で、生きる力にまでつながっています。そして、それは次の世代へもつながっています。
食育について、考える
2005年に食育基本法が制定され、栄養教諭制度が発足。食育は官民挙げて注目を集める。ある医者は、食育は教育の基本である。知育、徳育、体育の基礎であると。何事も基礎体力があればこそ身につく。食育といえば、ほとんど栄養バランス論になるが、その実践は極めてむずかしい。なぜなら50年も前からそのための教育や健康施設で行われてきたが、それが浸透していれば、日本の生活習慣病は激減していたに違いない。
乳幼児期:食べる意欲の基礎を作り、食の体験を拡げる。
学童・思春期:食の体験を深め自分らしい食生活を実践する。
青年期:健全な食生活を実践し次世代へ伝える。
成人期: 〃
高齢期:食を通じた豊かな生活の実現、次世代へ食文化や食に関する知識や経験を伝える。
妊娠期:妊娠期や授乳期の健康の確保のため適切な食生活を実践する。
生涯にわたって「食べる力」=「生きる力」を育む事が重要です。
食育で育てたい「食べる力」
1.心と身体の健康を維持できる。
2.食事の重要性や楽しさを理解する。
3.食べ物の選択や食事づくりができる。
4.一緒に食べたい人がいる。(社会性)
5.日本の食文化を理解し伝えることができる。
6.食べ物や作る人への感謝の心。
まだ食べられるのに捨てられる食品の事。国内の一人当たりの食品ロス量を試算すると「おにぎり1個分(103g)の食べ物が毎日捨てられている」計算となります。家庭で食品ロスが出る原因は、食べ残し・期限切れ・皮のむきすぎ等があります。
食品ロスを考える
生み出された食資源が余すところなく活用されているわけではない。流通・加工段階で発生する食品ロスは国内だけでなく、世界的にも大きな社会課題である。国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界では食糧生産量の三分の一に当たる約13億dの食料が毎年廃棄されていると報告されている。国内においては農業生産の現場で発生する規格外品、あるいは供給調整等で発生する未利用食資源も看過しがたい。今後、猛暑や長雨等の気候影響によって形や色が規格に合わずに、低利用になる農産物が多く発生する可能性がある。
日本の食品ロスは1年間に612万トン 東京ドーム約5胚分
食品ロスを環境の視点で考えますと、世界で排出される温室効果ガス(GHG)の34%がフードシステムで排出されています。その三分のTが、食品ロスのために排出されています。国際目標は現在、食品ロスの半減を目指しています。達成できれば、世界の温室効果ガスの5.5%を抑制できます。すなわち、過剰生産せず、食品ロスを減らし、食べ物を食べきる事は、環境負荷低減の上で非常に効果が大きく、消費者にできることは大きいと言えます。食料生産の過程で発生するGHG排出量(CO2換算)をみると、1`の米生産には、4`を排出し、牛肉は、60`にも多く排出する。さらに、食料を土地利用変化から生産、消費、その後の処分まで考えた際、どの場面でもGHGを多く排出するか見ると、土地利用変化と農場でのガス発生量が圧倒的に多く、約8割が食糧生産現場で発生します。そこで、温室効果ガス発生量を抑える技術を紹介します。例えば、稲作の「中干技術」。中干期間をを通常より1週間長くすることで、GHG排出量を3割削減できる。稲ワラを田にすき込む時期を秋に行う技術では、メタンの発生量を約5割り削減できる。農地に施用するとGHGを吸収(土壌に炭素を貯留)するバイオ炭技術もあります。牛の飼養過程に発生するGHGについては、餌にGHGの発生量を減らすカゲキノリを添加することで9割り削減可能です。また、カーシュナッツ殻成分の添加で2〜4割り削減される。他には、牛の鼻にマスクを装着し、集めたメタンの6割以上を首にかけた触媒装置でCO2と水に分解して放出する装置も開発されている。技術開発は進んでいますが、その効果は、消費者の選択にかかっています。消費者がいかにGHGが少ない農法で生産された食べ物を選ぶかが、技術普及の鍵を握る。いわば、消費者の食品ロスの削減行動こそ、環境負荷低減の有効策です。
ご家庭で
*買い物の前に冷蔵庫の中をチェックして必要なものだけを買う。
*買い物後は下処理をして適切に保管する。
*調理の時に食材は無駄なく使い切る。
*料理は作りすぎず、残った料理はリメイクで食べきる。
外食・宴会・テイクアウト等で
*食べきれるだけ注文し、残さず食べきる。
*食事量を調整してくれるお店を選ぶ(食品ロス削減協力店)
*宴会中料理を楽しんで食べる時間を作る。
「国民が必要として消費する食料は、できる限りその国で生産する」この考えを「国消国産」といいます。日本の食料自給率は過去最低水準です。もし、世界的な気候変動や人口増加による食料不足で、様々な国が輸出を制限したら、私たちの生活はどうなるのでしょうか。さらに、農業・農村には、洪水等の災害から街を守り、多様な生き物の住処になるなど、多くの役割があります。同じような意味で、地産地消があります。例えば、米国から「レモン」を輸入する場合、1カ月もかけて、薬まみれの「レモン」は、船で運びますが、多量の二酸化炭素を排出、温暖化は加速します。日本には、立派な薬のかけてない、「レモン」があります。地元の「レモン」を購入することで、二酸化炭素は、抑えられます。これぞ「ワンヘルス」の理念です。
環境負荷低減の取り組みの「見える化」
農林水産省は、みどりの食料システム戦略に基づき、消費者の選択に資する環境負荷低減の取り組みの「みえる化」を進めています。
化学肥料・化学農薬や化石燃料の使用低減、バイオ炭の施用、水田の水管理等の栽培情報を用い、定量的に温室効果ガスの排出と吸収を算定し、削減への貢献度合いに応じ星の数で分かりやすく表示します。
米については、生物多様性の保全の取り組みに応じて評価し、温室効果ガスの削減への貢献と合わせて等級ラベルで表示できます。
気温をあげないために二酸化炭素を出さない、増やさないことが大切で、炭を土の中に埋めることで二酸化炭素を減らすことができる。一般の農法と比べ20%以上温室効果ガス削減効果がある。
消費者の方には、「みえるらべる」の食べ物を選んでほしい。
第一次産業を支える環境・生態系への理解、食文化の気候変動への適応については、いまだ学問知が十分でない。今後、研究開発を進める必要がある。第一次産業において自然資本を介して生産活動を行うときは、食材を生み出す生態系の知識が必要である。将来にわたって豊かな食の恵を生み出す環境を保全し、食のサプライチェーンの最上流を持続可能な形で維持管理しようとすると、政治、経済、産業、教育、文化に係る様々なヒトの手が必要になる。我々の食資源を支える自然資本を保全し、恵みを受けるには、学術知、地域行政の力、産業の力、教育の力を結集しなければならない。
獣医師とSDGS
SDGSには、17のゴールがあります。そのうち、5つを取り上げ、動物たちも「どの子も取り残さない」ようにするために、動物の福祉に努めます。
SDGSの
4番目 質の高い教育をみんなに
人の命、動物の命に、慈しみを寄せられる、心を育てる。
11番目 住み続けられる街づくり
犬や猫を嫌いな人、苦手な人、無関心な人、好きな人等
様々な方がおられます。飼い主のマナーや適正に飼育
することで、コミニィテーが保たれます。
12番目 作る責任、つかう責任
命の大量生産をなくしていく、悲しい命の需要の不必要
性を考える。飼い主と命のあり方を適正なものにする。
16番目 平和と公正をすべての人に
平和な世界の中に、喜び、励まし、幸せを共感してくれる
動物たちもあり、ともに行動する。
17番目 パートナーシップで目標を達成します。
様々な方々と協力し、人と動物の共生社会の実現に努め
ます。
この20年間くらいで国際的に話題となった感染症
1.高病原性鳥インフルエンザA/H5N1のヒト感染(1997〜)
2.ニパウィルス感染症 (1998〜)
3.ウエストナイル熱 (1999〜)
4.重症急性呼吸器症候群(SARS) (2003)
5.新型インフルエンザ2009 (2009)
6.重症急性熱性血小板減少群(SFTS) (2011〜)
7.中東呼吸器症候群(MERS) (2012〜)
8.低病原性鳥インフルエンザA/H7N9のヒト感染(2013〜)
9.ポリオ (2014〜)
10.エボラ(西アフリカ) (2014)
11.ジカウイルス感染症 (2015〜)
12.ペスト(マダガスカラ、DRコンゴ、ペルー) (2017)
13.エボラ(DRコンゴ) (2018)
14.COVIDー19(コロナ) (2019〜)
15.MPOX(サル痘) (2022〜)
16.小児急性肝炎 (2022〜)
1〜8,10〜15は、動物由来感染症です。
広島県におけるダニ類媒介感染症(つつが虫、日本紅斑熱、重症急性熱性血小板減少症(SFTS))
ダニ類が病原体を媒介する感染症です。つつが虫と紅斑熱の病原体は、細菌の仲間のリケッチアです。SFTSの病原体は、ウイルスです。
*どのようにして感染するのですか。
つつが虫は、ツツガムシの幼虫です。紅斑熱とSFTSは、ダニです。吸血源の動物が生息する、野山、田畑、河川等に生息しています。すべてのダニが感染の原因になるわけではありません。野外での活動(庭仕事、農業、山仕事、狩猟、レジヤー等)の時に吸血されて、感染します。
*症状は、どのようなものですか。
つつが虫・日本紅斑熱は、倦怠感、頭痛、悪寒、高熱の後、体に米粒・大豆大の紅斑が出ます。体表面にダニの刺し口を探すことも、大事です。血液所見は、白血球・血小板が減少します。
SFTSは、発熱や消化器症状(吐き気、おうど、腹痛、下痢、リンパ節の腫脹、頭痛や筋肉痛)。血液所見は、白血球と血小板が減少します。
*過去の発生状況
つつが虫病の患者は、秋〜冬〜春に発生しています。特に県西部が多いようです。
日本紅斑熱の患者は、3月下旬〜11月に発生、県南部、島嶼部で報告されています。
SFTAの患者は、3月下旬〜11月に発生し、県南部、島嶼部で報告されています。
*治療は、どのようにするのですか。
つつが虫・日本紅斑熱は、テトロサイクリン系の抗生物質を使用します。
SFTSは、ウイルスのため、特異的な治療法がないので、対症療法を行います。
*予防はどうすればよいのですか。
つつが虫、日本紅斑熱、SFTSは、ワクチンがありません。ダニに刺されないような対策をします。長ズボン、長袖上着、虫よけ対策等。
*これらを診断した医師は、保健所に届けましょう。
感染症法で、4類に該当します。
感染症の予防の基本は、感染源、感染経路、感受性者(その感染症に罹患する可能性のある人)対策である。これらには、個人が行う部分と、社会全体で行う部分があり、個人としては、日常の衛生対策(清潔な生活と習慣)、予防接種なので、社会全体では、社会環境の整備、感染症発生時の拡大予防、予防接種なのです。両者は、明確には分けられるものではない。
個人の予防が社会全体の予防になり、社会全体の予防は、個人の予防に結びつく。