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動物由来感染症NEWS&FAQ

ヒトも動物も「みんなが健康な毎日に!」

動物と清潔で健康に過ごすためのルール
1.過度なふれあいは避けましょう。
2.動物を触った後はしっかり手を洗いましょう。
3。飼育用品を扱ったり掃除をするときは、手袋やマスクをしましょう。

動物由来感染症とは

「動物由来感染症」とは動物から人に感染する病気の総称です。人と動物に共通する感染症(ズーノーシス)は、「人獣共通感染症」や「人と動物の共通感染症」ともいわれます。医学と獣医学との境界領域におかれている。もとよりヒトに対してのみ感染性を有すると考えられる病原体に関する調査・研究や治療・診断は医学と医療の分野である。一方、動物に対してのみ感染性を有する病原体に関する対策は獣医学と畜産の役割である。しかし、実際には病原体の多くはヒトと動物の両方に対して感染して病原性を現し、ヒトと動物には共通の症状が認められることがよく知られている。

ZOONOSISの語句はギリシャ語のZOON(動物の)OSIS(病気)に由来し、1958年に行われたWHO(世界保健機関)とFAO(国連食料農業機関)の合同専門家会議ではズーノウシスを「ヒトとヒト以外の脊椎動物の間を自然条件下で伝播する微生物による疾病及び感染」、または「本来ヒトとヒト以外の脊椎動物の両方に感染することのできる性質を有する微生物による疾病及び感染」と定義した。すなわち、
・動物からヒトへ伝播する感染症と
・ヒトから動物へ伝播する感染症です。
・病原性は不明ですがヒトと動物の両方から分離される微生物による感染も、この定義に含まれます。
先に挙げたWHOとFAOの会議では、100以上の感染症が動物由来感染症として取り上げられました。その後、新興動物由来感染症(新興感染症)を加えると、優に200を超え、風土病的性格の強い感染症を含めるとさらにその数は増加すると考えられます。また、異常プリオン蛋白質も動物由来感染症の病原体として明らかになっている。

動物由来感染症の宿主
動物由来感染症の病原体の多くは動物を保有宿主とし、自然界における病原体の維持と増殖は固有の動物種の間で行われている。一方、ヒトは偶然その生活環に暴露されることで感染する終末宿主であることが多い。このために動物由来感染症の疫学的特徴を明らかにするためには宿主動物の生態を理解することが必要であり、予防法の確立には動物対策が重要な役割を担う事となります。病原体とヒトの間の距離が縮まるにしたがって感染の成立は容易になる。人間は餌付け、囲い込み、繁殖の管理等を行うことで、動物との距離を調節し、動物を管理して様々な関係を構築してきた。

代表的な動物種と人間の関係、動物群の分類

動物例  家畜化  管理  心理的交流  動物群 
イヌ
ネコ 
12000年前
7000年前 
 食・住・生理  あり  ペット
プレーリードッグ
鳥類
爬虫類 
 野生  食・住・生理  なし  エキゾチックペット
 キツネ
サル
コウモリ
 野生 なし   なし  野生動物
 カラス
ハト
クマネズミ
 野生  (食)・(住)一部利用  なし  都市型野生動物
 ウサギ
ニワトリ
ハムスター
 (?)  食・住・生理  なし  学校飼育動物等
 ウシ
ヒツジ
ウマ
ニワトリ
 8000年前
10000年前
6000年前
 食・住・生理  なし(少し)  家畜
 ニシン
マス
カキ
 野生  なし  なし  魚介類
 ライオン
サル類
鳥類
 野生  食・住・生理  なし  展示動物
 マウス
モルモット
サル類
(?)  食・住・生理  なし  実験動物

最近は珍しい哺乳類、鳥類、爬虫類等をペットとして飼育する愛好家が増えている。これらエキゾチックアニマルの多くは捕獲・保護された野生動物で、感染症対策の上からも注意すべき動物群であります。

ペット
1)イヌ・ネコの口腔内常在菌
2)ネコと猫ひっかき病
3)ネコとトキソプラズマ症
4)イヌ、ネコと皮膚糸状菌症

エキゾチックペット

病原体   病名  エキゾチックペット
 ウイルス ポックスウイルス感染症
Bウイルス症 
フィロウイルス感染症
ニューカッスル病
狂犬病
クリミアコンゴ出血熱
カリフォルニア脳炎
腎症候性出血熱
ハンタウイルス肺症候群
リンパ球脈絡髄膜炎
コロラドダニ熱
脳心筋炎
ウエストナイル熱
黄熱
オムスク出血熱
キャサヌール森林熱
デング(出血)熱
ダニ媒介性脳炎
跳躍病
ムレーバレー脳炎
シンドピス脳炎
西部ウマ脳炎
チクングニア熱
べレズエラウマ脳炎
 齧歯類、サル
サル
サル
小鳥
齧歯類
齧歯類
齧歯類
齧歯類
齧歯類
齧歯類
齧歯類
齧歯類、サル、小鳥
小鳥
サル
齧歯類、両性・爬虫類
齧歯類、サル
小鳥
齧歯類、小鳥
齧歯類
小鳥
小鳥
齧歯類、小鳥
齧歯類、サル、小鳥
齧歯類
 リケッチア・クラミジア  Q熱

オウム病
発疹熱
ブートン熱
リケッチア痘
ロッキー山紅斑熱
 齧歯類、サル、小鳥、淡水魚、両性・爬虫類

小鳥
齧歯類
齧歯類、小鳥
齧歯類
齧歯類

 細菌  ブドウ球菌症
レンサ球菌症
類鼻祖
野兎病
ボルデテラ感染症
鼠咬症
カンピロバクター感染症
ペスト

エルシニア症

サルモネラ症

細菌性赤痢

リステリア症


類丹毒
ウエルシュ菌中毒
結核
非定型好酸菌症
回帰熱
ライム病
レプトスピラ症
 齧歯類、サル
齧歯類、サル
齧歯類、サル
齧歯類
齧歯類

齧歯類
齧歯類、小鳥、両性・爬虫類

齧歯類
齧歯類、サル、小鳥、淡水魚、両性・爬虫類
齧歯類、サル、小鳥、淡水魚、両性・爬虫類
サル

齧歯類、サル、小鳥、淡水魚、両性・爬虫類

齧歯類
齧歯類

サル
小鳥、淡水魚

齧歯類
齧歯類
齧歯類
 真菌  クリプトコックス症
ヒストプラズマ症
皮膚真菌症
 サル、小鳥

小鳥

齧歯類
 原虫  ジアルジア症
シャーガス病
赤痢アメーバ症
バベシア症
バランチジュウム症
リーシュマニア症
 齧歯類
齧歯類
齧歯類、サル
サル
サル

齧歯類

寄生虫   住血線虫症
マレー糸状虫
毛細虫症
肝吸虫症
エキノコックス症
小型条虫症
縮小条虫症
 齧歯類
サル
小鳥、淡水魚
齧歯類
齧歯類、キタキツネ

齧歯類
齧歯類

我が国の主な野生哺乳類と、保有宿主や感染源となる可能性のある感染症

野生動物  ウイルス   リケッチア 細菌・真菌  原虫   寄生虫
 キツネ      ライム病
エーリッキア症
エルシニア症
パスツレラ症
サルモネラ症
レプトスピラ症
 クリプトストリジュウム  エキノコッカス症
鉤虫症
 アライグマ      レプトスピラ症
ライム病
 アメーバ症
ジアルジア症
クリプトストリジュウム
 アライグマ回虫症
イヌ・ネコ回虫症
イヌ糸状虫症
イノシシ           ドロレス顎口虫症
ウエステルマン肺吸虫症
 サル  Bウイルス感染症    結核  クリプトストリジュウム  
 タヌキ      皮膚糸状菌症    イヌ糸状虫症
 齧歯類  ダニ媒介性脳炎
腎症候性出血熱
 日本紅斑熱
Q熱
 ペスト
レプトスピラ
鼠咬症
野兎病
バルトネラ症
ライム病
 バベシア症
クリプトストリジュウム
 小型条虫症
コウモリ   腎症候性出血熱    ヒストプラズマ症  バベシア症
クリプトストリジュウム
 

これまでに我が国の都市型野生動物から感染が報告されている、又は危惧される感染症

 都市型野生動物 ウイルス・リケッチア・クラミジア   細菌・真菌  原虫・寄生虫
 カラス・ハト等の鳥類  ウエストナイル熱
Q熱
オウム病
クリプトコックス症
ヒストプラズマ症
類丹毒
サルモネラ症
エルシニア症
カンピロバクター症 
 セルカリア皮膚炎
 クマネズミ・ドブネズミ等  リンパ球性脈絡髄膜炎
腎症候性出血熱
Q熱
発疹熱
リケッチア症
 皮膚糸状菌症
鼠咬症
パスツレラ症
エルシニア症
リステリア症
ブドウ球菌感染
レンサ球菌感染
野兎病
類丹毒
カンピロバクター症
回帰熱
レプトスピラ症
ペスト
サルモネラ症
 クリプトストリジュウム
広東住血線虫症
縮小条虫症
肝吸虫症

ビルのネズミとリステリア症
季節を問わずクマネズミが捕獲されその約40%がリステリア菌を保有している。わが国では、リステリア菌が原因で判明した食品媒介感染の発生事例は報告されていない。しかし、海外では、低温殺菌牛乳、チーズでの報告事例がある。また、アメリカでは七面鳥肉を介した大規模なリステリア症の発生があり、多数の死亡や流・死産が報告されている。

我が国の主な学校飼育動物と注意すべき動物由来感染症

動物種  注意すべき主な動物由来感染症
 
 ウサギ  パスツレラ症
サルモネラ症
野兎病
クリプトストリジュウム症          
 ニワトリ・ウズラ・七面鳥  ニュウカッスル病
壊死性腸炎(ウエルシュ菌感染)
ブドウ球菌症
サルモネラ症
オウム病
クリプトコッカス症
ヒストプラズマ症
 魚(金魚・コイ)  サルモネラ症
非定型好酸菌症
カンピロバクター症
類丹毒
 小鳥  オウム病
皮膚真菌症
エルシニア症
サルモネラ症
 カメその他爬虫類、両生類  サルモネラ症
非定型好酸菌症
 ハムスター、モルモット等  パスツレラ症
エルシニア症
レンサ球菌症
鼠咬症
ブドウ球菌症
リンパ球性脈絡髄膜炎
その他の鳥類(アヒル、カモ等)   オウム病
アスペルギルス症
ヒストプラズマ症
クリプトコッカス症

OIEリストA及びリストB家畜感染症のうち、ヒトに伝播しうる感染症

OIEリスト  感染症 病原体  指定家畜種 
 A  口蹄疫
水泡性口内炎
リフトバレー熱
羊痘
鳥インフルエンザ
ニュウカッスル病

 口蹄疫ウイルス
水泡性口内炎ウイルス

リフトバレーウイルス

羊痘ウイルス
インフルエンザウイルス
ニュウカッスルウイルス

 
 
 B  炭疽
エキノコックス症
レプトスピラ
Q熱
狂犬病
旋毛虫症
バベシア症
ブルセラ症
ウシ結核
無鉤条虫症

デルマトフィルス症
トリパノゾーマ症
牛伝達性海綿状脳症
流行性羊流産
ナイロビ羊病
仮性皮疽

東部・西部ウマ脳炎
鼻祖
日本脳炎
ベネズエラウマ脳炎
有鈎条虫症
鳥結核
オウム病
野兎病
リーシュマニア症
 Bacillus anthracis
Echinococcus条虫

Leptospira interrogans
Coxiella burneti
狂犬病ウイルス
Trichinella spiralis
Babesia属原虫
Brucella属菌
Mycobacterium bovis
Taniarhynchus saginatus
Dermatophilus congolensis
Trypanosoma属原虫

プリオタンパク質

Chiamydia psittaci

ナイロビ羊病ウイルス
Histoplasma farciminosum
ベネズエラウマ脳炎ウイルス
Burkholderia mallei
日本脳炎ウイルス
ベネズエラウマ脳炎ウイルス
Taeenia solium
Mycobacterium avium
Chiamydia paittaci
Francisella tularensis
Leishmania 属原虫

リストA:国境を超えて迅速に伝播する可能性がある
リストB:発生の影響を国内にとどめることが可能

伝播経路別に感染が報告されている主な動物由来感染症

咬傷・なめる   創傷・引っ掻き  接触 咳・くしゃみ  糞・尿から口 
狂犬病
リッサウイルス
リンパ球脈絡髄膜炎
ラッサ熱
アルゼンチン出血熱
ブドウ球菌症
パスツレラ症
カプノサイトファガ感染 
 ニパウイルス
ペスト
非定型好酸菌症
野兎病
猫引っ掻き病
類丹毒
鼠咬症
カプノファガ感染
パスツレラ症
 水疱性口内炎
ポックスウイルス群
ラッサ熱
Q熱
結核
レプトスピラ症
皮膚真菌症
ボルデテラ感染
ペスト
鼻疽
オウム病 
 ハンタウイルス感染
ラッサ熱
リンパ球脈絡髄膜炎
A型肝炎
オウム病
カンピロバクター症
サルモネラ症
アメーバ症
トキソプラズマ症
幼虫移行症

動物食品等による伝播

媒介食品   病名 原因 
 肉、肉製品  変異型クロイツフェルトヤコブ病
炭疽
カンピロバクター症
ガス壊疽
病原性大腸菌症
サルモネラ症
仮性結核
肉胞子虫症
トキソプラズマ症
ズビニ鉤虫症
槍型吸虫症

肝蛭
ウエステルマン肺吸虫症
有鈎条虫
無鉤条虫

旋毛虫症
 ウシ異常プリオンタンパク質
Bacillus anthracis
Campyrobacter属菌
Clostridium perfringens
Escherichia coli
Salmonella属菌
Yersinia enterocolitica
Sarcocystis hominis
Toxoplasma gondii
Ancylostoma duodenale
Dicrocoelium dendriticum
Fasciola属吸虫
Paragonimus westeruanii
Taenia solium
Taeniarhynchus saginatus
Trichinella spiralis
 乳、乳製品  Q熱
ブルセラ症
リステリア症
結核

ブドウ球菌症
 Coxiella burnetii
Brucella属菌
Lysteria monocytogenes
Mycobacterium tuberculosis
staphylococcus
 卵 サルモネラ症
ブドウ球菌感染 
 Salmonella属菌
Staphylococcus属菌
 魚介類  A型肝炎
ウイルス性胃腸炎
類丹毒

ビブリオ症
アニサキス症
広節裂頭条虫
棘口吸虫症
顎口虫症
横川吸虫症
ニベリン条虫症
アニサキス症

旋尾線虫症
 Hepatitis A virus
Noro virus
Erysipelothrix rhusiopathiae
Vibrio fluvialis
Anisakis simmplex
Diphyllobothrium latum
Echinostoma属吸虫
Gnathostoma属線虫
Metagonimus yokogawai
Nybelinia surmenicola
Pseudoterranova decipiens
Spirurin線虫

主な感染源魚介類と寄生虫感染

感染源動物   寄生虫感染
ニシン 
タラ
アジ
サバ
サクラマス
シラウオ
スルメイカ
ホタルイカ
ドジョウ
アユ
フナ
ウグイ
コイ
ハゼ
モツゴ
ライギョ
サワガニ
モクズガニ
テナガエビ
 アニサキス症、ニベリン条虫症
アニサキス症、旋尾線虫症
アニサキス症
アニサキス症
広節裂頭条虫
横川吸虫症
アニサキス症、ニベリン条虫
旋尾線虫症
棘口吸虫症、剛棘顎口虫症
横川吸虫症
横川吸虫症
横川吸虫症、剛棘顎口虫症
横川吸虫症
フィリピン毛細虫症
肝吸虫症
有棘顎口虫症
ウエステルマン肺吸虫症
ウエステルマン肺吸虫症
住血線虫症

ベクターによる媒介

ベクター  感染症  宿主動物 
 ノミ 野兎病
発疹熱
ペスト
 
野ウサギ 
家ネズミ
クマネズミ
 蚊  イヌ糸状虫
日本脳炎
 イヌ、ネコ、タヌキ
ブタ、ウマ
 ダニ  ライム病
バベシア症
日本紅斑熱
野兎病
Q熱
ダニ媒介性脳炎
 野ネズミ
野ネズミ
野ネズミ
野ウサギ
ウシなど
野ネズミ
 メマトイ  東洋眼虫症  イヌ
 ツツガムシ  ツツガムシ病  

*ツツガムシ病の原因リケッチアには動物宿主は存在せず、フトツツガムシやタテツツガムシの中で経卵感染をして維持されている。したがって、狭義の動物由来感染症には含まれないが、ツツガムシの生存には温血動物の存在が不可欠である。

節足動物などの媒介によるウイルス感染症
世界各地に存在する主なアルボウイルス感染症

  疾患名と代表的なベクター   主な流行地域
 ダニ媒介  コロラドダニ熱
ポワサン脳炎
クリミアコンゴ出血熱

ダニ媒介性脳炎
キャヌール森林熱
 北米
北米
アフリカ、中近東、ヨーロッパ
ヨロッパ、ロシア、日本
インド
 蚊媒介  ベネズエラウマ脳炎

東部・西部ウマ脳炎

セントルイス脳炎
ウエストナイル熱

カリフォルニア脳炎
デング熱

黄熱

チクングニア熱

リフトバレー熱
シンドビス熱

日本脳炎

メレーバレー脳炎
北・中・南米、カリブ海諸国 
北・中・南米、カリブ海諸国
北・中米、カリブ海諸国
北米、アフリカ、中近東、ヨーロッパ、インド

北米


中・南米、アフリカ、東南アジア、オーストラリア

中・南米、カリブ海諸国、アフリカ

アフリカ、インド、東南アジア、太平洋諸島
アフリカ
アフリカ、ヨーロッパ、ロシア、オーストラリア
ロシア、インド、東南アジア、日本
東南アジア、オーストラリア
 ヌカカ媒介  水疱性口内炎  東南アジア、オーストラリア
 スナバエ媒介  フレボトム熱 中・南米、アフリカ、中近東、インド 

環境因子の介在
動物由来感染症の病原体の多くは、感染動物の糞や尿とともに体外に排泄される。排泄された病原体が自然環境に対して強い抵抗性を有する場合には、長期間にわたって水系や土壌汚染の原因になる。人間はこのような汚染環境と接触して粘膜や創傷から病原体が侵入したり、乾燥した汚物がエアロゾル化し、それを吸い込む事で吸入感染する。

 伝播経路 関連する動物  動物由来感染症も例 
 水系汚染 爬虫類など 


ブタなど
ネズミ類


ウシなど

ムクドリなど
キツネ
サルモネラ症
非定型好酸菌症
エルシニア症
類丹毒 
リステリア症
レプトスピラ症
アメーバ症
クリプトストリジュウム症
ジアルジア症
セルカリア皮膚炎
エキノコックス症
 土壌汚染  ウシなど
ブタなど
ヌズミ類


ネコ

キツネ
 炭疽
類丹毒
類鼻疽
レプトスピラ症
リステリア症
トキソプラズマ症
幼虫移行症
エキノコックス症
 エアロゾル  ネズミ類
コウモリ

家畜など
鳥類

ハト、コウモリなど
 ハンタウイルス感染症
狂犬病
ヒストプラズマ症
Q熱
ニュウカッスルウイルス病
オウム病
クリプトコxクス症
ヒストプラズマ症

新興動物由来感染症
それまで人間の世界では知られていなかった、あるいは発生の頻度がごく希であった感染症が突然発生して新たな脅威となるとき、あるいはそれまでに発生のなかった地域に新しく発生が見られたとき、これは新興感染症と呼ばれる。その多くは病原体の起源を動物などの自然界に求めることができる新興動物由来感染症である。

種の壁と新興動物由来感染症
動物を起源とする新興感染症の病原体の中には、いったん動物からヒトへ種の壁を超えて伝播した後ではヒトの世界のみで感染を繰り返す病原体と、動物由来感染症として常に感染動物を必要とするものとがある。

AIDS
動物の感染症が種の壁を超えてヒトに感染するようになった病原体には、AIDSの病原体であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)がある。HIVは、1980年頃アフリカにおいて、種の壁を超えてサルからヒトに感染したと指摘されている。その意味においては動物由来感染症と考えることができる。しかし、いったんヒトの世界に侵入したHIVは動物宿主を必要とせずヒトからヒトへと感染を繰り返している。このためAIDSを動物由来感染症と呼ぶことはできない。

野生齧歯類由来アレナウイルス感染症

 ウイルス
(発見年)
疾患名、症状  分布  動物宿主 
リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(1933)   リンパ球性脈絡髄膜炎、無菌性髄膜炎  南北アメリカ、ヨーロッパ、世界中  ハツカネズミ
 フニンウイルス(1957)  アルゼンチン出血熱(致死率30%)  アルゼンチン アルゼンチンヨルマウス 
マチュポウイルス(1964)   ボリビア出血熱(致死率25%)  ボリビア ブラジルヨルマウス 
 ラッサウイルス(1969) ラッサ熱(致死率15%)   アフリカ西部 マストミス 
 サビアウイルス  アルゼンチン出血熱様症状 ブラジル  ? 
グアナリトウイルス アルゼンチン出血熱様症状(致死率25%)   ベネズエラ トウマウス 

コウモリ由来感染症
地球上の哺乳類のうち、齧歯類に次いで多くの種と生息数で知られる動物種はコウモリである。食中コウモリ、血吸いコウモリ、食果性のコウモリが知られる。

オオコウモリ(フルーツバット)を自然宿主とする新興ウイルス感染症

 ウイルス名  出現年、場所 ヒト以外の感受性動物  分布 
 ヘンドラウイルス  オーストラリア(1994) オオコウモリ8自然感染)
ウマ(自然感染)
ネコ(実験感染)
モルモット(実験感染) 
 オーストラリア、パプアニューギニア
オーストラリアコウモリリッサウイルス   オーストラリア(1996)  オオコウモリ(自然感染) オーストラリア 
 メナングルウイルス」  オーストラリア(1997)  ブタ(自然感染)
オオコウモリ(自然感染?)
 オーストラリア
 ニパウイルス  マレーシア(1997)  オオコウモリ(自然感染)
ブタ(自然感染)
イヌ(実験感染)
ネコ(実験感染)
ウマ(実験感染)
 マレーシア
インド
インドシア半島
フィリッピン

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病
発生の状況が特異的であった新興動物由来感染症に、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病がある。中枢神経に多いプリオン蛋白質に構造異常が現れて希に発生する神経疾患の一つに古典的CJDが知られている。古典的CJDでは異常プリオン蛋白質が脳組織に徐々に蓄積し、患者の神経細胞は機能異常に陥り、致死的な経過をたどる。

新興動物由来感染症出現の要因

出現の要因

感染のサイクルが動物の間で完結していた微生物が、いつどこでヒトと接触して病原性を現すのか、またその最終的な重要度がどの程度になるかを予測することは不可能であります。しかしこれまでの新興感染症の出現には、下の表に見られますように、きわめて多くの要因が複雑に絡み合っています。

病原体側の要因  自然選択
病原性の変異
薬剤耐性獲得
抗生物質の多用 
生理的要因  易感染性宿主
ワクチン接種
抵抗性状態の変化(栄養不良、高齢化、ストレスなど)
飼育方法の変化(過密飼育、養殖) 
環境要因  生態系の変化
気候の変化(多雨、小雨、温暖化)
環境の変化・破壊
人間の居住域の拡大
水系汚染
廃棄物 
 食品要因 製造法の変化
流通の拡大 
 ベクター要因  生態変化
薬剤抵抗性の変化
 社会的要因 輸送・移送の迅速、活発化
市場の拡大
ダム
灌漑
戦争
難民の発生
社会・経済の疲弊
人口増加
生活圏の拡大
都市化
スラムの形成
アウトドア活動 
医原病  新規動物材料
異種移植 


動物由来感染症が問題になる背景

人間の社会環境の変化と行動の多様化があげられます。
例えば、交通手段の発展による膨大な人と物の速やかな移動、人口の都市集中、土地開発と自然環境の変化、先進国では高齢者など感染抵抗力が弱い人々の増加や野生動物のペット化です。

世界では、多くの感染症が見つかっています

その多くが動物由来感染症です。これらには、人への感染力も強く重症化するもの、治療法がないもの、ワクチンが実用化されていないものもあります。(重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、エボラ出血熱、マールブルグ病、中東呼吸器症候群(MERS)、ハンタウイルス肺症候群等)
世界保健機関(WHO)が確認しているだけでも200種類以上あります。

ワンヘルス

動物から人へ、人から動物へ伝播可能な感染症は、すべての感染症の約半数を占めています。医師や我々獣医師は、活動分野で人獣共通感染症に接触リスクを有しています。こうした分野横断的な課題に対し、人、動物、環境に連携して取り組むワンヘルスという考え方が推進されています。

\

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

中国で新たに報告された感染症です。全世界で人の感染が報告されています。新型コロナウイルスの保有宿主は不明な点が多く、その遺伝子配列がコウモリ由来のSARS様コロナウイルスに近いため、コウモリが起源である可能性が示唆されています。これまでに人から犬、猫、ミンク、トラ、ライオン等への感染事例が報告されています。
感染経路は、人から人への飛沫感染、エアロゾル感染や接触感染です。

日本の動物由来感染症

日本は、比較的動物由来感染症が少なく、寄生虫や真菌による疾病を入れても数十種類程度と思われます。地理的要因(温帯で島国)、家畜衛生対策の徹底、衛生観念の強い国民性があげられます。

動物由来感染症の伝播

 伝播経路 具体例    動物由来感染症の例 
 直接伝播  かまれる
ひっかかれる
(糞便)
(飛沫・塵埃)
(その他)
 狂犬病、カプノサイトファーガ感染症、パスツレラ症、ネズミにかまれる、猫ひっかき病
トキソプラズマ症、回虫症、エキノコックス症、クリプトコックス症、サルモネラ症、        オウム病、コリネバクテリウム、ウルセランス感染症
皮膚糸状菌症、ブルセラ症、ペスト
 ベクター媒介  ダニ類


ノミ
ハエ
クリミアコンゴ出血熱、ダニ媒介脳炎、日本紅斑熱、つつが虫病、重症熱性血小板減少症(SFTS)、ライム病、野兎病
 日本脳炎、ウエストナイル熱、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症
ペスト
腸管出血性大腸菌感染症
 環境媒介  水
土壌
 クリプトスポリジュウム症、レプトスピラ症
炭疽、破傷風
 動物性食品媒介  肉・肉製品
鶏卵
乳製品
 腸管出血性大腸菌感染症、E型肝炎、カンピロバクター症、変異型クロイツヘルト・ヤコブ病、住肉胞子虫症、トキソプラズマ症
サルモネラ症
牛型結核、Q熱、ブルセラ症
アニサキス症、クドア症、ノロウイルス感染症動物由来感染症


動物の各カテゴリーと動物由来感染症との関連

カテゴリー(群)  動物由来感染症との関連 
 ペット 犬や猫もヒトにうつる病原体を持っている。不適切なふれあい等によりまれに感染する。
その他、鳥やウサギ、は虫類などどのようなペットも病原体を持つ。 
 野生動物 どのような病原体を持っているのか不明な事が多い。ヒトにとって重篤な感染症の病原体を持っていることもある。 
 家畜・家禽 畜産物が食中毒や感染症の原因となる場合がある。衛生対策の徹底で予防可能な感染症が多い。 
 展示動物  展示動物も病原体を持つので、ヒトと動物とがふれあえる施設では、動物由来感染症に配慮した対策が重要である。

動物由来感染症の病原体

病原体  引き起こされる感染症の例 
 ウイルス 狂犬病、日本脳炎、ウエストナイル熱、デング熱、ジカウイルス感染症、ガニ媒介脳炎、E型肝炎、
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、
エボラ出血熱、Bウイルス病,MPOX、,COVIT-19
 
 リケッチア・クラミジア  日本紅斑熱、つつが虫病、オウム病
 細菌  Q熱、ペスト、サルモネラ症、レプトスピラ症、パスツレラ症、猫ひっかき病、ブルセラ症、カプノサイトファーガ感染症、コリネバクテリュウム・エルセランス感染症、カンピロバクター症、炭疽、ライム病、鼠咬症、野兎病
 真菌  皮膚糸状菌症、クリプトコッカス症
 寄生虫 トキソプラズマ症、回虫症、エキノコックス症、クリプトストリジウム症、アニサキス症 
 プリオン 変異型クロイツフェルト・ヤコブ病 

狂犬病予防注射について
犬の飼い主様に、登録並びに狂犬病予防注射をしていただいておりますのは、「狂犬病予防法」に基づき、狂犬病ワクチンの接種には、獣医師会が担当させていただいております。この法律によれば、登録をせず、ワクチン接種をせず、登録の鑑札と狂犬病予防注射済票をつけていなければ、20万円以下の罰金となっております。飼い主の皆様には、順法精神にのっとり履行していただいていることに対し、感謝申し上げる次第でございます。そこで、国(厚生労働省)を挙げて対処しています、「狂犬病」につきまして、お話させていただきたいと思います。
はじめに
狂犬病は、狂犬病ウイルスを原因とする代表的な動物由来感染症であり、狂犬病がヒトと動物で見られない国はごくわずかであります。哺乳類のほとんどは狂犬病ウイルスに感受性であります。狂犬病ウイルスは神経親和性が高く、末梢のウイルス感染組織から神経上行性に中枢神経に到達して、発症の数日前から、唾液中にウイルスが排出されるようになります。狂犬病の感染は、主に狂犬病を発症した動物による咬傷等が原因です。
原因病原体                              狂犬病の原因病原体は、ラブドウイルス科リッサウイルス属にはいる狂犬病ウイルスです。このウイルスは弾丸の形態をとる直径75〜80nm、全長180〜200nmの大きなRNA型ウイルスであり、(−)鎖の1本鎖RNAをゲノム(核酸)にもちます。ウイルスの成熟粒子は、ゲノムRNAと、少なくとも5つのウイルス蛋白から構成されており、狂犬病ウイルスの感染と伝播はG蛋白に対する中和抗体で抑制・阻止されます。
動物宿主、病原体の自然界分布
狂犬病ウイルスは全ての温血動物に感染可能でありヒトを含めて、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ等の家畜や、自然界ではキツネ、ジャカル、アライグマ、スカンク、マングース、コウモリ等が感受性動物として知られています。狂犬病の流行を媒介している動物種は限られています。アジアではイヌに狂犬病が流行しており、アフリカでは主にイヌ、ジャカル、マングースで狂犬病が流行しています。一方、イヌの狂犬病制御に成功したヨーロッパと北米では、野生動物に狂犬病が流行しています。ヨロッパでは主にアカキツネに流行しており、北アメリカではコウモリ、アライグマ、スカンク、キツネ、コヨーテで流行が見られます。ヒトが狂犬病に感染する危険な動物種は、国や地域により異なります。

地域  動物種 国名 
 アジア オオカミ   イラン、イラク、アフガニスタン
アフリカ   セグラジャカル
キイロマングース
オオミミキツネ
 アフリカ南部
 ヨーロッパ  アカギツネ
ホッキョクギツネ
ハイイロキツネ
タヌキ
オオカミ
 
東ヨーロッパ

ロシア北部




ポーランド、バルト海沿岸、ロシア
ロシア
 南北アメリカ  ホッキョクギツネ
キタアメリカキツネ
ハイイロキツネ
コヨーテ
シマスカンク
アライグマ
食中コウモリ
吸血コウモリ
マングース属
 北アメリカ各地
(カナダ、アラスカ、ニユーイングランド地方、アリゾナ、テキサス)




カナダ中部、アメリカ中部カリフォルニア
アメリカ合衆国、南アメリカ


テキサス南部、メキシコ、中央・南アメリカ、トリニダードトバコ
プエルトリコ、グレナダ、キューバ、ドミニカ

疫学
毎年世界で3万〜5万人(推定)が狂犬病で死亡しており、その多くはアジア等の発展途上国であります。現在、狂犬病の発生が報告されていない国は、日本、イギリス、北欧の3カ国等わずかであります。狂犬病はワクチン接種により発症を予防的に防ぐ事が可能であり、世界中で年間1,000万〜1,200万人ものヒトが暴露後発病予防治療(PEP)を受けています。従来、狂犬病ウイルスは血清学的に単一のウイルスと考えられていましたが、最近になって免疫学的・分子生物学的解析により、流行地域や流行宿主に固有の変異株が多数存在することが明らかにされています。これは、発生した狂犬病がどの地域から来たのかを特定するのに大変有効な手段となっています。

伝播経路
一般に狂犬病は、唾液中に排出されたウイルスが咬傷部位や粘膜面から侵入して、感染が成立します。ウイルスには神経親和性が高く、咬傷を受けた末梢の神経もしくは筋肉組織から、神経上行性に中枢神経に侵入します。感染してから狂犬病を発症するまでの1〜3カ月、長い例で6カ月といった潜伏期が大きな特徴です。感染後症状を呈してから死に至るまでは経過が早く、ほぼ1週間であります。神経細胞内で増殖したウイルスは、感染の後期に遠心性に網膜、角膜、唾液腺、筋肉、皮膚等の末梢の神経組織に広がります。
臨床症状
狂犬病を発症した動物の初期症状として最も重要な所見は、「性格や行動の変化」であります。犬の狂犬病では、性格の変化、視覚的及び聴覚的刺激に対する過敏、恐怖心による興奮、飼い主に対する反抗、遠吠え、咬傷部の?痒、嚥下筋の麻痺による流延、瞳孔の散大及び麻痺症状が見られます。動物ではヒトと異なり「狂水症」を呈しません。野生動物では、とくに「行動異常」が最も重要な所見であり、不自然にヒトと接触を試みる場合や、夜行性の動物(コウモリ、アライグマ、キツネ)が日中に現れる場合には狂犬病が疑われます。現在、ヒトとイヌ、アライグマ、フェレット以外の動物に関して、狂犬病発症までの潜伏期間や発症前後における唾液中へのウイルス排出に関する詳細な報告はなく、異なる動物種における狂犬病の病原性や感染リスクに関してはいまだに不明な点が多いです。
ヒトの狂犬病の発症は、主に「恐水症」を呈し、水を飲みたくても咽喉頭が痙攣し、水を飲むことができません。中枢神経(脳)が犯されるので、異常な行動(暴れたり、狂ったようになり、犬のように遠吠えをしたり、よだれ、痙攣等)が見られます。誠に悲惨な症状でありまして、身内の者が「なんの因果なるやと悲嘆せしめた」と記録に残っております。

診断
鑑別診断には神経症状を伴う疾患が挙げられるが、狂犬病を臨床症状から確定診断することは困難です。また、感染してから発症するまでの潜伏期間内に、ウイルスや血中の抗ウイルス抗体が検出されることもありません。したがって、狂犬病の確定診断は、発症したヒト及び動物の新鮮な脳組織を用いて行います。検査は、神経組織内のウイルス抗原を蛍光抗体法で検出する方法と培養細胞もしくはマウスを利用してウイルスを分離する方法、RT-PCR法による遺伝子診断が行われています。ヒトが狂犬病の疑いがある動物に咬傷を受けた場合には、速やかにPEPの開始を行い、ヒトを咬んだ動物が検査で陰性と診断された場合にのみ、PEPの継続が中止されます。

治療と予防法
狂犬病は有効な治療法がなく、発症するとほぼ100%死亡しますが、ワクチン接種により予防が可能なウイルス感染症です。したがって、、狂犬病の流行地や感染動物の侵入が危惧される地域では、狂犬病を媒介するリスク動物(主にイヌとネコ:ネコはリスク動物であるが狂犬病の流行動物ではない)にワクチン接種を行ってヒトへの感染やリスク動物での狂犬病流行を予防します。野生動物に狂犬病が流行している地域では、経口ワクチンを散布して流行の拡大を防ぐことが行われています。ヒトでは、適切なPEPを行うことによって、狂犬病の発症を阻止することができるが、とくに狂犬病に感染するリスクが高い場合は、暴露前の予防接種を受けておくことが必要です。

以上、市民の皆様には、いかに狂犬病の恐ろしさや犬の狂犬病ワクチン接種が重要であるかお分かりいただけたと思います。今後とも、ご理解とご協力をお願い申し上げます。

犬猫由来感染症
 
 パスツレラ症
     病気の特徴:咬まれたところの腫れと痛み、皮下の炎症、症状が早い、気道から感染すると、風邪様、気管支炎、肺炎等を示す。
感染経路:犬や猫に普通に見られる細菌で、動物に咬まれたり、飛沫を介した経気道感染も。
予防:動物との節度ある触れ合いを心がける。口移しやキスとはしない。
 猫ひっかき病
     病気の特徴:1週間前後で受傷部の丘疹・水泡、発熱を示す。その後、傷口の上位のリンパ節が痛みを伴って腫脹する。予後は、良好で、症状が数週間〜数か月継続するものの、自然治癒する。
     感染経路:菌は猫の赤血球内に存在する。保菌した猫に、咬まれたり、引っ掻かれたりして、皮膚から感染する。まれに保菌猫を吸血したネコノミから感染することがある。保菌猫も患者も西日本に多い            。
     予防:動物との節度ある触れ合いを心がけ、引っ掻かれないようにする。猫にはノミの駆除や防虫薬を使用。
 カプノサイトファーガ感染症
     病気の特徴:症状は、発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛等。敗血症や髄膜炎を起こし、播種性血管内凝固症候群(DIC)や敗血症性ショック、多臓器不全に進行し、死に至ることもある。患者の大半が40歳以上で、男性が70%を占める。
     感染経路:犬や猫の口の中で普通に見られる細菌で、主に咬傷・掻傷から感染、傷口をなめられても感染           する。
     予防:動物節度のある触れ合いを心がける。咬まれたり、引っ掻かれないようにする。
 コリネバクテリュウム・ウルセランス感染症
     病気の特徴:感染初期は発熱・鼻汁排泄等の風邪に似た症状で、その後、咽頭痛や咳が始まり、ジフテリアと同様の症状を示す。
     感染経路:本菌に感染した犬や猫との接触や飛沫により感染する。海外では、牛等の家畜との接触や、殺菌されていない生乳の摂取により感染例もある。
     予防:成人用ジフテリアトキソイドやDPTーIPV(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)4種混合ワクチンが効果あり。くしゃみや鼻汁等の風邪症状や皮膚病を呈している動物との接触を控える。動物と触れ合った後、手洗いを行う。

  トキソプラズマ症
     病気の特徴:感染時期や感染者の状況で異なる。妊婦の初期感染では胎児にも感染して、死流産や先天性トキソプラズム(水頭症、精神運動機能障害など)の可能性がある。健康な成人や小児が初感染したときは多くは無症状だが、体内に潜伏し、免疫力が低下すると、日和見感染として脳炎や肺炎を起こす。

     感染経路・感染状況:猫はトキソプラズマの終宿主で糞便中にオーシストを排出する。そのオーシストを取り込む事で豚等の哺乳動物や鳥類は体内組織にシストを形成する。人は加熱不十分な食肉中のシストの経口摂取することによっても感染する。国内の感染率は低く、数%の猫・豚が感染していると考えられる。
     予防:食肉(特に豚肉)や鶏肉は十分に加熱して食べる。猫に生肉を与えない。感染猫〜排出されたオーシストが感染能を獲得するまでに約23時間を要するので、糞便の処理を毎日(24時間以内)に行う。
   ブルセラ症
      病気の特徴:不明熱や倦怠感など風邪様で軽微か、きずかないケースも多い。濃厚感染すると重症化することもあり、慢性化して長期間罹病の報告ある。
      感染経路・感染状況:感染犬は、死流産を起こして流産胎児や排泄物中へ、尿や精液にも排菌する。これらに接触又は飛沫等の吸入により感染する。1970年代で犬の感染が見つかって以降、国内お犬に3〜5%が感染している。
     予防:信頼できるブリーダーから購入する。飼い犬が流産等をした場合の処理には気をつける。感染の確認には抗体検査が用いられる。感染犬には投薬治療も行われるが、慢性化していると治療は困難である。犬や人用のワクチンはない。
    重症熱性血小板減少症症候群(SFTS)
     病気の特徴(症状):初期症状は、発熱、全身倦怠感、消化器症状で、時に意識障害などの神経症状や出血症状が出現する。重症化し、死亡することもある。特に、高齢者では重症化しやすい。
    感染経路・感染状況:感染マダニに咬まれて感染する。西日本で患者報告が多く、春から秋にかけて患者数が多い。発症した猫や犬の体液からも感染することが報告されている。猫は感染・発症したときの症状が強く、感染猫からの咬傷や接触による飼育者や動物病院従事者の感染例も。
    予防:マダニに咬まれないよう、草むらややぶ等、マダニが多く生息する場所に入る場合は、肌の露出を少なくし、マダニに効く虫除け剤を使用する。動物にもマダニの駆除・某中薬を使用し、どうぶつが体調不良の際は、動物病院を受診する。むやみに弱った野生動物に手を出さない。
   カメ等爬虫類由来の感染症
    サルモネラ症
    病気の特徴(症状):発熱、下痢、腹痛等の胃腸炎症状を呈する。まれに菌血症、敗血症、髄膜炎等、重症化して死亡する事もある。
   感染経路・感染状況:汚染食品により感染するが、爬虫類等の動物等の動物との接触から感染することがある。カメ等の爬虫類の50〜90%がサルモネラ菌を保有している。国内でも子供がペットのミドリガメから感染して重症化となった事例がある。
   予防:ペットの飼育環境を清潔に保ち、世話をした後、石鹸等を使って流水で十分手を洗う。免疫機能の低い人(新生児や乳児、高齢者)がいる家庭での爬虫類の飼育は控える。カメ等の飼育水はこまめに交換する。水を交換するときには、感染しないように注意するとともに、排水で周囲が汚染しないよう気を付ける。

鳥由来感染症
       オウム病
   病気の特徴(症状):突然の発熱(38以上)で発症し、全身倦怠感・食欲不振・筋肉痛・関節痛・頭痛のインフルエンザのような症状を示す。重症では、呼吸困難・意識障害を起こし、診断が遅れると死亡する場合もある。
  感染経路・感染状況:インコ・オウム等の糞に含まれる菌を吸い込んだり、口移しでエサを与えることでも感染する。2002年と2005年に国内の動物展示施設で従業員や来場者に集団感染があった。
  予防:インコ、オウム等に口移しでエサを与えない等、濃厚な接触を避け、節度ある接仕方大切である。特に妊婦は注意がする。ケージ内の羽や糞をこまめにし、鳥の世話やケージの清掃をするときは、マスクや手袋をする。病鳥から大量の菌が排泄されるので、鳥の健康管理には注意する。治りにくい咳や息苦しさを感じたらオウム病を疑って受診し、鳥を飼っていることを医師に伝える。
      クリプトコッカス症
  病気の特徴(症状):健常者の肺クリプトコッカス症例では無症状の事が多いが、風邪様症状を示す。免疫力が低下していると、時に慢性の肺疾患に進行する。皮膚クリプトコッカス症例は皮診等の皮膚症状を示す。脳髄膜炎症例では、発熱や頭痛を示し、おうどや嘔気等の髄膜刺激症状、性格変化や意識障害等の神経症状が見られることもある。
  感染経路・感染状況:土壌等環境中に存在する真菌で、吸入や傷のある皮膚を介して感染する。はと等の鳥類の糞中でよく増えて、感染源の一つになる。
  予防:免疫力の低下している人は、公園や駅等の鳥類(ハト等)の糞が堆積しているところに近づかない。飼育者はこまめに糞を清掃する。

野生動物由来感染症
     エキノコッカス症
   病気の特徴(症状):感染した虫卵は腸内で幼虫がふ化し、その後肝臓で包虫となって発育・増殖する。感染後、数年から十数年ほどたって自覚症状が現れる。初期には上腹部の不快感・膨満感、進行すると肝機能障害を起こす。
   感染経路・感染状況:北海道のキタキツネが主な感染源で、糞中にエキノコッカスの虫卵を排出する。北海道で放し飼いをして感染した犬もキタキツネ同様に感染源になる。人はエキノコッカスの虫卵が手指、食物や水等を介して口から入る事で感染する。
   予防:野山の出かけた後は手をよく洗う。キツネを人家に近づけない。生ゴミ等を放置せず、エサを与えたりしない。沢や川の生水は煮沸してから飲む。山菜や野菜、果物もよく洗ってから食べる。犬も感染した野ネズミを食べて感染するため、放し飼いをしない.飼い犬の場合は駆虫薬の定期的投与も効果がある。

      レプトスピラ症
   病気の特徴(症状):5〜14日の潜伏期の後に、38〜40ドの発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、結膜充血等の初期症状で発症する。重症の場合は、発症後5〜8日目に黄疸、出血、腎臓機能障害の症状が現れる。
   感染経路・感染状況:保菌動物(ネズミ、犬等)の尿中に長期間菌が排出される。感染動物の尿や尿に汚染された水や土等〜皮膚や口を介して感染する。全国で散発的に発生し、水辺・田畑・店舗内と感染場所に特徴があるが、地域によっては集団発生も報告されている。
   予防:汚染の可能性のある水・水辺等には近づかない。必要時には、手袋やゴーグル等を着用して、水や土壌に直接触れないようにする。ネズミの駆除や侵入阻止等の動物対策により、店舗内の清潔を保つ。感染の可能性のある動物と接触する場合は手袋やマスクを着用する。

食品由来感染症
     E型肝炎
    病気の特徴(症状):潜伏期は平均6週間で、急な発熱、倦怠感、吐き気やおうどが見られるようになり、数日後に黄疸を示す。通常2週間程度で収まるが、重症例として劇症肝炎になることがある。
    感染経路・感染状況:ブタ、シカ、イノシシ等はE型肝炎ウイルスを保有していることがある(特にブタは効率に感染している)。肉やレバーを十分に加熱市内で食べることにより感染する。感染患者の糞便中のウイルスに汚染された水や食品を介しても感染する。近年、患者が急増し、毎年300名以上の患者が報告されている。
    予防:食肉(特にブタ、イノシシ、シカ)の生食はせず、必ず十分に加熱して食べる。食事の前には十分手洗いをし、衛生状態が悪い国では、飲用水や野菜等にも注意を払う。

     薬剤耐性菌対策(AMR)
    薬剤耐性菌とは?:細菌感染症の治療に使われる「抗菌薬」がきかない菌の事です。抗菌薬を飲むと病原菌が退治されますが、薬剤耐性菌だけ生き残り、増えてしまう事があります。薬剤耐性菌が増えると、これまできいていた抗菌薬がきき肉うなり、治療に影響することがあります。薬剤耐性菌は抗菌薬を飲んだ人でもペットでも増える可能性があります。
    対策:ペットにおいて薬剤耐性菌を増やさないためには、人と同様に動物病院で処方された抗菌薬を最後まできちんと飲ませきることが大切です。薬剤耐性菌をペットから人、人からペットへと広げないためには、特別な対策が必要なわけではなく、他の動物由来感染症と同じように「日常生活で注意すること」を守り、口移しや食器の共有はやめ、ペットを触った後や排泄物を処理した後に必ず手を洗う事が大切です。また、ペットに生肉を与える場合には十分に加熱処理をしましょう。生肉には有害な寄生虫や食中毒菌が存在する可能性があります。

     ペットを飼う前に
近年、ペットからコンパニオン・アニマルへと、人間は動物とより濃密な関係を築くようになってきました。ペットを飼うということについて考えて見ると、実はいろいろなリスク(感染症、アレルギー咬傷事故等)を背負うことにもなります。愛玩動物由来感染症には多くの種類があります。動物から人への病原体の伝播は距離が近いほど容易になるので、節度をもって付き合うことが重要です。また、リスクは、飼育する動物種、大きさ、性質の違いにより異なります。さらに、飼育者・同居者の年齢や健康状態によってもリスクは異なります。つまり、ペットを飼う前には、飼うことによって得られる利益と、起こるリスク(不利益)を天秤にかけて、十分に事前検討することが必要になります。飼いたいから飼う、という安易な結論は、思いもよらない結果をもたらす事があります。

動物由来感染症に感染しないためには、どうしたらいいの?
 ・過剰な触れ合いは控えましょう
 ・野生動物の家庭での飼育や野外での接触は避けましょう。
 ・動物に触ったら必ず手を洗いましょう。
 ・動物の身のまわりは清潔にしましょう。
 ・糞尿は速やかに処理しましょう。
 ・室内で鳥を飼育するときは、換気に心がけましょう。
 ・砂場や公園で遊んだら必ず手を洗いましょう。

体に不調を感じたら、早めに相談を!
 ・早めに医療機関に相談しましょう。
 ・ペットの健康状態に注意しましょう。
 ・犬の登録と毎年の予防注射等は飼い主の義務です。

海外で注意したい動物由来感染症
       狂犬病:昔、日本でも感染した犬に咬まれて多くの国民が感染して命を落としました。犬対策(野犬の捕獲とワクチン摂取)により、1957年を最後に人・動物ともに国内感染はありません。1970年、2006年、2020年に、海外で咬まれて感染し、帰国・入国後に発症した輸入例があります。
       病気の特徴(症状):通常1から3カ月の潜伏機関の後に発症し、初期は風邪に似た症状で、咬まれた部位に知覚異常が見られる。不安感、恐水症、興奮、麻痺、錯乱等の神経症状が現れ、数日後に呼吸麻痺で死亡する。発症すると、ほぼ100%死亡する。
       感染経路・感染状況:発症した犬、猫、アライグマ、キツネ、スカンク、コウモリ等に咬まれるなど唾液中のウイルスが体内に侵入して感染する。世界のほとんど地域で発生しており、死者は年間6万人と言われている。特にアジアとアフリカでの発生が多い。
       予防:海外ではむやみに動物に近づかない。渡航先で狂犬病のおそれのある犬等に咬まれたら、すぐに傷口を石鹸ときれいな水でよく洗い、速やかに医療機関で傷の処置と治療、狂犬病ワクチンの接種を受ける。狂犬病の流行国で犬に接する機会がある場合や長期滞在する場合は、渡航前にワクチン接種をしておくとよい。

      ペスト
日本でも関東以西で、ネズミから感染して多くの患者が命を落とした。ネズミ対策(駆除)により、1926年の患者、1930年のネズミを最後に、人・動物とも国内に発生はない。
        病気の特徴(症状):せんペスト、敗血症、肺ペストに大別され、人では約85%はせんペストである。せんペストは急激な発熱、頭痛、倦怠感、リンパ節の腫脹等を示し、敗血症ペストや肺ペストに移行すると致死率や他者への感染リスクもより高くなる。適切な抗菌薬による治療を行わないと予後不良となる。
        感染経路・感染状況:病原体を保菌したネズミ類に寄生したノミに刺されて感染することが多いが、感染動物(プレーリドッグ等の野生ネズミ類等)の体液に触れたり、まれに菌を吸入して感染する。特に肺ペストでは患者の飛沫を介した吸入感染もある。世界では南北アメリカ、アフリカ、アジア、インドで地方病的に存在し、アフリカが患者の90%以上を占め、マダガスカルではたびたび流行が報告される。米国では感染ネズミ類と接触して感染した犬・猫や、それを介した人の感染も報告されている。
        予防:発生地では、野生ネズミ類やそれらを餌とする猫等感染動物や患者との接触を避ける。

       中東呼吸器症候群(MERS)
       病気の特徴(症状):発熱、せき、息切れ等ですが、下痢等の消化器症状を伴う場合もあります。特に高齢者、糖尿病や免疫不全等の基礎疾患がある人では重症化する傾向があります。
       感染経路・感染状況:ヒトコブラクダが感染源の一つとして有力視されているが、患者家族や医療施設内でのヒトからヒトへの感染もある。中東地域から世界27カ国へひろがり患者が発生している。サウジアラビアが患者の60%を占める。韓国でも200名近くの流行があった。
       予防:流行地では、ヒトコブラクダ等の動物との接触を避ける。未殺菌のラクダの乳等の加熱が不十分な食品を避ける。

       鳥インフルエンザ
       病気の特徴(症状):鶏、七面鳥、ウズラ等が高病原性鳥インフルエンザに感染すると、全身症状を示して死亡する割合が高くなる。ヒトの症状の多くは発熱、呼吸器症状(肺炎)であるが、多臓器不全で死亡する場合もある。
       感染経路・感染状況:人は、感染鳥やその排泄物、死体、臓器等に濃厚に接触することによって感染することがある。H5N1亜型は、アジア・アフリカ等で、H7N9亜型は中国で発生が確認されており、ヒトの感染も起きている。近年では、エジプトや中国で感染者が多く確認されている。自然界では、わたりをする野生の水きん類(鴨類)がウイルスを保有している場合がある。2020年〜2022年にかけて日本国内の野鳥、家禽でH5N8やH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザが発生している。死亡した鳥との接触には注意する必要がある。
       予防:鳥インフルエンザの流行地域では、病気の鳥や死亡した鳥にむやみに近づかない。触らない。特に流行地の市場等の生きた鳥を扱っている場所には近づかない。国内でも、弱っている野鳥や死亡野鳥との接触は避ける。

 蚊に刺されないようにしましょう!
     デング熱・チクングニア熱・ジカウイルス病:3つの感染症は、発熱、発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠感、頭痛等似た症状を示す。デング熱は重症化すると出血やショック等を示し、死亡する場合がある。チクングニア熱は、手足の関節痛が多くの患者で認められが、急性症状が軽快した後も、数週間から数か月にわたって続くことがある。ジカウイルス病は、デング熱やチクングニア熱より症状は一般的に軽いが、妊娠中のジカウイルス感染と胎児の小頭症やギランバレー症候群との関連性が強く示唆されている。
     感染経路・感染状況:ウイルスを保有する蚊に刺されれことにより感染する。東南アジアやアフリカ、中南米等、熱帯・亜熱帯地域で流行している。
     予防:流行地域では蚊よけ剤の使用や長袖・長ズボンを着用して素肌の露出を少なくして、蚊に刺されないようにする。デング熱は再感染症時に重症のリスクが高くなることから、過去に感染歴を持つものは特に注意が必要です。

       ウエストナイル熱
      病気の特徴(症状):突然の発熱(39ド以上)頭痛、筋肉痛、ときに消化器症状、発疹を示す。通常、1週間以内に回復するが、その後倦怠感が残ることが多い。感染者の約1%未満が、重篤な症状として脳炎、髄膜炎、麻痺、昏睡等を示す。感染者の80%は不顕性感染である。
      感染経路・感染状況:ウエストナイルウイルスを保有する蚊に刺さされることにより感染する。近年、欧米知久での発生が確認されている。日本での発生はないが、米国で感染して帰国後に発症した例はある。
      予防:流行地区では蚊よけ剤の使用や、長袖・長ズボンを着用して素肌の露出を少なくして、蚊に刺されないようにする。

感染症法による動物由来感染症対策
    感染症法=感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
感染症法では、病原体の感染力や病気に係った場合の重症度等に基づいて、綜合的な観点から、感染症を1〜5類感染症に分類し、それぞれについてとりえる措置を定めています。また、感染症の発生を早期に、正確に把握するために、患者を診断した医師は保健所への届け出義務があります。(法第12条)また、一部の感染症については、感染・発症した動物を診断した獣医師にも保健所への届け出義務があります。(法第13条)
主な感染症の類型と発生の把握
   医師の届け出
医師の届け出の対象となる主な動物由来感染症(2022年1月1日現在)
・1〜4類感染症は診断後直ちに届け出、5類感染症は診断後7日以内に届け出

一類感染症  エボラ出血熱、クリミアコンゴ出血熱、南米出血熱、ペスト、ブルーマルグ病、ラッサ熱 
 2類感染症  結核、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)、中東呼吸器症候群(MERS)
3類感染症   細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症
 4類感染症  E型肝炎、ウエストナイル熱、エキノコッカス症、黄熱、オムスク出血熱、オウム病、回帰熱、キャサヌル森林病、Q熱、狂犬病、サル痘(MPOX)、ジカウイルス感染症、重症熱性血小板減少症(SFTS) 腎症候性出血熱、西部ウマ脳炎、ガニ媒介脳炎、炭疽、チクングニア熱、ツツガムシ病、デング熱、東部ウマ脳炎、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザH5N1、H7N9を除く)、ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、日本脳炎、ヘンドラウイルス感染症、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、鼻そ、ブルセラ症、ベネズエラウマ脳炎,発しんチフス、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、ライム病、リッサウイルス感染症、リフトバレー熱、レプトスピラ症、ロッキー山紅斑熱,MPOX
 5類感染症  アメーバー赤痢、クリプトスポリジュウム症、ジアルジア症、破傷風、COVITー19

日本で発生した場合に重大な影響が予想される感染症やヒトの感染予防に注意が必要な感染症として規定される感染症にかかった動物を診断した獣医師は、保健所へ届け出る事が義務付けられました。また、輸入される動物を原因とする感染症の発生を防止するため、動物(家畜・家禽を除く)に対し、輸入の禁止、検疫、届け出といった規制が講じられています。
感染症法

対象動物   対象疾病 主な措置 
サル   エボラ出血熱、マールブルグ病、MPOX
細菌性赤痢、結核
 輸入禁止、発生時の届出
 ペレーリードッグ  ペスト  輸入禁止、発生時の届け出
 イタチアナグマ、タヌキ、ハクビシン  重症急性呼吸器症候群(SARS)  輸入禁止、発生時の届け出
 コウモリ  狂犬病、ニパウイルス感染症、リツサウイルス感染症  輸入禁止
 ヤワゲネズミ(マストミス)  ラッサ熱  輸入禁止
 鳥類  ウエストナイル熱、鳥インフルエンザ(H5N1,H7N9)  発生時の届け出
 ヒトコブラクダ  中東呼吸器症候群(MERS)  発生時の届け出
 犬  エキノコッカス症  発生時の届け出
 哺乳類、鳥類(家畜や家禽を除く)  動物ごとに定められる疾病  輸入の届け出
げっ歯目、節足動物類、ヒトの感染源となる動物   1〜4類感染症  駆除、消毒等の対物措置(発生予防と蔓延防止)
 ヒトの感染源となる動物  感染症全般  疫学調査(関係者の強力の上)

狂犬病予防法

対象動物   対象疾病  主な措置
 犬、猫、キツネ、スカンク、アライグマ  狂犬病  輸入検疫、犬の登録・予防注射、発生時の届け出・隔離命令

検疫法

対象動物   対象疾病  主な措置
 ネズミ族、虫類  検疫感染症  港湾区域内での衛生調査、駆除

ヒトと動物には共通した病気があることを、知って置きましょう

わが国や外国で発生している主な動物由来感染症

動物種   主な感染症  予防のポイント
犬  パスツレラ症、皮膚糸状菌症、エキノコッカス症、カプノサイトファーガ感染症、コリネバクテリーム・ウルセランス感染症、ブルセラ症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、狂犬病  節度ある触れ合い、手洗い等の励行
猫  猫引っ掻き病、トキソプラズマ症、回虫症、Q熱、パスツレラ症、カプノサイトファーガ感染症、コリネバクテリウム・ウルセランス感染症、皮膚糸状菌症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、狂犬病   節度ある触れ合い、手洗いの励行
 ねずみ、ウサギ  レプトスピラ症、鼠咬症、野兎病、皮膚糸状菌症  節度ある触れ合い、手洗いの励行
 小鳥、ハト  オウム病、クリプトコッカス症  節度ある触れ合い、手洗いの励行
爬虫類   サルモネラ症 病気のついて不明のことも多いので、一般家庭では控えるべき 
 観賞魚  サルモネラ症、非定型抗酸菌症    〃
 プレーリードッグ  野兎病、ペスト    〃
リス 野兎病、ペスト     〃
 アライグマ  狂犬病、アライグマ回虫症    〃
コウモリ   狂犬病、リッサウイルス感染症、ニパウイルス感染症、ヘンドラウイルス感染症    〃
 キツネ  エキノコッカス症、狂犬病    〃
 サル 細菌性赤痢、結核、Bウイルス病、エボラ出血熱、マールブルグ病 ,MPOX    〃
 野鳥(ハト・カラス)  オウム病、クリプトコッカス症、ウエストナイル熱    〃
ネズミ、ウサギ   レプトスピラ症、鼠咬症、野兎病、腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺」症候群、ラッサ熱    〃
 牛、豚、鶏  Q熱、クリプトストりジュウム症、腸管出血性大腸菌感染症、トキソプラズマ症、炭疽、鳥インフルエンザ(H5N1,H7N9)  適切な衛生管理、中心までしっかり加熱して食す
蚊   ジカウイルス感染症、チクングニア熱、デング熱、ウエストナイル熱  虫よけ剤、長袖、長ズボン等の着用
 ダニ ダニ媒介脳炎、日本紅斑熱、つつが虫病、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、クリミア・コンゴ出血熱     〃
特記事項
 ・我が国で病原体がいまだ、もしくは長期間発見されていない感染症
    狂犬病、ペスト、リッサウイルス感染症、ニパウイルス感染症、ヘンドラウイルス感染症、エボラ出血熱、マールブルグ病、ウエストナイル熱、ハンタウイルス肺症候群、ラッサ熱、コンゴ出血熱,,MPOX

 ・わが国では患者発生の報告がない感染症
    アライグマ回虫症、鳥インフルエンザ(H5N1,H7N9),MPOX

 ・厚生労働省は、サル痘について、差別用語として、MPOXという表現をしています。